(1)地質

調査地の地質は、新第三系を基盤岩とし、第四系の土石流堆積物、段丘堆積物、扇状地堆積物および沖積層が分布する。調査地の地質層序表を表3−2−5に示すと共に、縮尺1:25,000の地質図を図3−2−10−1図3−2−10−2に示す。また、縮尺1:5,000〜1:2,500のルートマップを図3−2−11−1図3−2−11−2図3−2−12図3−2−13−1図3−2−13−2図3−2−13−3に示す。

以下、各地層について記載する。

(1)新第三系

福井県(1969)によると、本調査地には、安山岩質溶岩およびその砕屑岩からなる浄法寺累層(丹生山地の糸生累層に相当)が分布するとされる。

現地踏査においては、坂井町付近の丘陵部や丸岡町篠岡付近の段丘直下に、安山岩質凝灰角礫岩が確認される。また、丸岡城の載る段丘や丸岡町野中三王付近においては、安山岩質凝灰岩が分布する。

凝灰角礫岩は、安山岩礫(φ数〜20cm前後、角〜亜角〜亜円礫)を多く伴っており、黄橙色〜黄褐色に風化することが多い。凝灰岩は軽石凝灰岩や細粒凝灰岩からなる。全体に露頭状況が悪く、これらの地層の分布等は不明な点が多い。ここでは福井県(1969)に従い、一括して浄法寺累層と呼称する。

調査地域において観察された浄法寺累層の代表的な露頭写真を、写真1写真2写真3写真4、写真5、写真6写真7写真8に示す。

(2)第四系

1)坂井町付近

S1堆積物

露頭では確認されていないが、S1面の分布が権世川右岸に限られ、面は河川に沿って傾斜することから、河成の礫から構成されると考えられる。

S2堆積物

露頭では確認されていないが、S2面は権世川沿いに分布し、面は河川に沿って傾斜することから、河成の礫から構成されると考えられる。

S3堆積物

露頭では確認されていないが、S3面の分布および形態から海成面と考えられることから、海成砂等の細粒物質から構成されると考えられる。また、北疋田東方の丘陵の西縁で認められた露頭では、本面に対比されると考えられる面において、地表付近まで基盤の凝灰角礫岩が確認されていることから、本堆積物の層厚は薄いと考えられる。

S4堆積物

S4堆積物は、細〜中粒砂からなる。砂は淘汰が良く、海成堆積物と考えられる。風化部は褐色を呈する。なお、本層を覆う風成層は確認されず、その形成年代は不明である。

S5堆積物

露頭では確認されていないが、S5面は河川の侵食による段丘化が進行している沖積面であることから、砂質〜泥質の細粒物質から構成されると考えられる。なお、S5面は丸岡町付近に分布するMr6面に対比されると考えられることから、本層についても後述のMr6堆積物に対比されるものと考えられる。

2)丸岡町付近

Mr1堆積物

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。

Mr2堆積物

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。また、丸岡町篠岡およびその北方に位置する小丘に分布するMr2面においては、人工改変により本層が失われていると考えられるが、露頭および周囲の状況から地表付近まで基盤の凝灰角礫岩が分布していたと考えられ、本堆積物の層厚は薄いと考えられる。なお、このことは、丸岡町篠岡付近の小丘で確認された低位のMr3面が凝灰角礫岩起源の崖錐堆積物に覆われることからも示唆される。

Mr3堆積物

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。なお、丸岡町篠岡付近のMr3面の露頭では面を覆う崖錐堆積物が確認されているが、この崖錐堆積物が本層に相当するかどうかは不明である。また、丘陵縁辺部に分布するMr3面は扇状地の発達する沢沿いに分布することから、扇状地性の礫から構成されると考えられる。

Mr4堆積物

Mr4堆積物は、シルト〜細粒砂からなる。シルトは塊状あるいは弱い水平層理が発達し、風化部は黄褐色を呈する。砂は淘汰が良く、石英粒子に富んでおり、海成堆積物と考えられる(写真9写真10)。なお、本層を覆う風成層は確認されず、その形成年代は不明である。

Mr5堆積物

Mr5堆積物は、扇状地性〜河成の礫層からなる。

丸岡町篠岡で確認されたMr5堆積物は扇状地性の堆積物と考えられ、シルト質砂からなる基質に富み、安山岩起源の亜円〜亜角礫(径5〜25cm)を含む。この地点においては、N30゚E方向に高さ約1m程度の低崖が延びており、その延長は湿地となっている(図3−2−13−2写真11写真12写真13)。

丸岡町小黒で確認されたMr5堆積物は、安山岩〜デイサイト起源の亜角〜亜円礫が4m以上の厚さで確認される。基質に乏しく、礫径は2〜30cmである。礫はほとんど風化を受けておらず一方向に配列しており、河成堆積物と判断される(写真14写真15)。本地域で認められたMr4面の標高は15〜20mである。

丸岡町小黒で確認されたMr5堆積物を覆う風成層において連続サンプルを行い、火山灰分析を行ったところ、風成層中部より緑色普通角閃石および斜方輝石が多く抽出された。これらの重鉱物の屈折率は、緑色普通角閃石が1.6798〜1.6826(平均1.6810)、斜方輝石が1.7033〜1.7143(モード1.703〜1.706)である。なお、火山ガラスは抽出されていない。

調査地域である北陸地方において、角閃石および輝石類を多量に降下させた火山としては大山火山が挙げられ、大山火山起源の火山灰のうち、最も遠方にまで降灰の確認されている火山灰はDKPである。DKPの重鉱物の屈折率と、今回得られた屈折率とを比較した場合、両値はそれぞれ類似しており、抽出された緑色普通角閃石および斜方輝石は大山火山DKP降下軽石起源である可能性が示唆される。

以上のことより、Mr5堆積物はDKP降下年代(約5万年前)以前に形成されたものと考えられるが、その正確な形成期は特定できない。しかしながら、Mr5面を構成する礫がほとんど風化を受けないこと、Mr5面が河成面であり、1段高位に分布するMr4面が海成面である可能性が高いこと等から、Mr4面は最終間氷期最盛期(酸素同位体サブステージ5e:約12〜13万年前)の形成、Mr5面はその後の低海面期(酸素同位体サブステージ5d:約11〜12万年前)以降に形成された可能性がある。このことは、山本(1996)が越前海岸で南関東の小原台面(形成年代酸素同位体サブステージ5c:約10〜11万年前)に対比したM2面の段丘構成層上限高度が10〜10数mであり、M2面を覆う風成層中部からDKPが検出されていることとも調和的である。

Mr6堆積物

露頭では確認されていないが、Mr6面は河川の侵食による段丘化が進行している沖積面であることから、砂質〜泥質の細粒物質から構成されると考えられる。本層は、前述のS5堆積物に対比されるものと考えられる。

土石流堆積面

露頭では確認されていないが、淘汰の悪い砂礫から構成されると考えられる。

扇状地面

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。

3)松岡町付近

Mt1堆積物

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。

Mt2堆積物

露頭では確認されていないが、Mt2面は九頭竜川沿いに分布し、面は河川に沿って傾斜することから、河成の礫から構成されると考えられる。

Mt3堆積物

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。Mt3面は低位扇状地堆積物(T)には覆われないことから、本層の形成期は低位扇状地堆積物(T)よりも新しいと考えられる。

Mt4堆積物

露頭では確認されていないが、砂礫から構成されると考えられる。

高位扇状地堆積物

露頭では確認されていないが、淘汰の悪い砂礫から構成されると考えられる。なお、高位扇状地面はMt1面およびMt2面を開析する谷の中に発達することから、本層の形成期はMt2堆積物よりも新しいと考えられる。Mt3堆積物との関係は不明であるが、面の開析程度等から、Mt3堆積物より古いと考えられる。

低位扇状地面

露頭では確認されていないが、淘汰の悪い砂礫から構成されると考えられる。面は高位扇状地面を開析する谷の中に発達し、Mt2面を覆い、Mt3面に削られる急傾斜のT面とMt4面を覆う緩傾斜のU面に分けられることから、本層も低位扇状地堆積物(T)および(U)の2層に分けられる。低位扇状地堆積物(T)は、その分布より高位扇状地堆積物の形成より新しく、Mt3堆積物より古いと考えられる。また、低位扇状地堆積物(U)は、Mt4堆積物より新しいと考えられる。

表3−2−5