(1)地形概要

本調査対象地域には、北部の加越台地に段丘面が広く分布するほか、沖積低地と東部の山地の境界部に小規模な段丘面が断片的に分布する。北部の加越台地については、三浦(1988)、豊蔵ほか(1991)等の報告があるが、その他に分布する地形面については、その研究例はほとんどない。

三浦(1988)は、北陸第四紀研究グループ(1969)の研究結果を基に調査地周辺の段丘面を高位段丘、中〜低位段丘(古砂丘を含む)に区分し、その分布を図3−1−11に示している。また、加越台地の段丘面については、高位および中位の2段の段丘面からなるとし(図3−1−12)、中位段丘構成層上部に浜地火山灰層(中島・三浦、1983;FT年代約12万年前)が挟まれることから、中位段丘を最終間氷期に形成されたものとしている。豊蔵ほか(1991)は、中位段丘構成層を覆う古土壌(埋没土)の下部から鬼界葛原テフラ(K−Tz)および阿蘇4テフラ(Aso−4)を検出し、これらのテフラとの層序関係および岩石学的特徴等から、浜地火山灰を三瓶木次テフラ(SK)に対比し、従来最終間氷期の形成とされてきた中位段丘構成層である芦原砂層(北陸第四紀研究グループ、1969)が、南関東の小原台面構成層に対比されることを明らかにしている。なお、豊蔵ほか(1991)は、この三瓶木次テフラと他の広域テフラとの層序関係から、その噴出年代を8〜9万年前としたが、町田・新井(1992)および第四紀学会編(1996)は、その噴出年代として10万年前を提案している。

また、風成の中粒砂層は古砂丘堆積物と称され(三浦、1988)、その表層部を覆う古土壌中からは大山倉吉テフラ(DKP)が抽出されているほか(三浦・藤田、1967;豊蔵ほか、1991)、姶良Tnテフラおよび鬼界アカホヤテフラについても検出されている(豊蔵ほか、1991)(図3−1−13)。

山本ほか(1996)は、越前海岸に分布する海成段丘の構成層および風成堆積物中から三瓶木次テフラ、鬼界葛原テフラ、阿蘇4テフラ、鬼界アカホヤテフラを抽出し、従来下末吉面相当とされていた中位段丘の一部が小原台面に対比されること、また小原台面相当の段丘より低位の三崎面に対比できる段丘が分布することを明らかにしている。

以上のように、調査対象地域の後期更新世以降の段丘の細分は、一部地域で検討されているにすぎない。