(1)林道沿いの地質観察

地質観察は図2−2、地質区分は表2−1に示す。また、地質観察と併せ測量をおこない、巻末資料「測量図」(付図1)として添付した。

(a)概 要

ルートに沿って、基盤をなす美濃帯の中・古生層の緑色岩、頁岩、少量の砂岩、チャートとそれらを貫く貫入岩およびこれらを不整合に覆う未固結の堆積物が認められる。未固結堆積物は下位から年代未詳第四紀層、支流性中位段丘*堆積物(以下、中位段丘堆積物)、および本流性低位段丘堆積物(以下、低位段丘堆積物)に大別できる。

なお、中位段丘堆積物とした地層からは、その形成年代測定値が得られていないため、今後の検討でより古くなる可能性がある。年代未詳第四紀層を覆う低位段丘堆積物は標高365~380m付近に、中位段丘堆積物は380~390m付近に分布する。いずれの堆積物も径数cmの角礫を主体とし、径数10cmの礫をまじえる。下位の堆積物ほど、風化は進み、締まっている。

基盤岩中には北北西方向で北あるいは南に高角度で傾く小断層が認められるが、上記の断層の露頭を除くと、上位の未固結の堆積物に変位を及ぼす断層破砕帯は認められない。

(b)詳細な地質の記載

1)地質層序と記載

下位の地層から順に記載する(表2−1)。

a.美濃帯:

主として緑色岩、頁岩と少量の砂岩、チャートから構成される。砂岩は灰白色を、緑色岩、頁岩は暗灰色〜暗褐色を呈する。貫入岩近傍の緑色岩、頁岩はホルンフェルス化している。チャートは林道の入り口付近でのみ見られ、淡黄褐色〜にぶい黄橙色に変色している。

b.貫入岩:

美濃帯に貫入した閃緑岩質の岩石で、いずれも幅数mでほぼ南北方向に高角度の岩脈として分布している。緑黄灰色〜にぶい黄色を呈する。

c.年代未詳第四紀層:

礫混じりシルト〜細砂。T2〜T5(測量図参照)にかけて分布する。紫灰色〜暗赤褐色を呈し、赤色風化が著しい。礫は「くさり礫」がかなり多い。中位段丘堆積物に比べ締まっている。この事から中位段丘堆積物より古い時期の堆積物と考えられる。

d.支流性中位段丘堆積物:

本堆積物はT6〜T8にかけて、標高380~390m付近に分布する。基盤岩との不整合面はT8からT6に向かって徐々に低くなる。かなり固結している。赤色風化度は低い。層相から基質が粘土主体のTmc層、基質が砂主体の角礫層であるTms層、角礫主体層であるTmg層の3層に区分される。

Tmg層:(後述の6F〜D層相当)

角礫。暗褐色を呈する。礫径は2~40cmを主とし、淘汰は悪い。基質は中砂〜極粗砂である。基底層をなす。

Tms層:(後述の6Da、6Eb層)

角礫混じり砂。黄褐色〜灰黄褐色を呈する。角礫は礫径2〜50cmを主とし、淘汰は悪い。シルト混じり砂(細砂〜粗砂)主体である。葉理の発達するレンズ状の砂層の挟みが認められる。

Tmc層:(後述の6C〜A層)

角礫混じり粘土。灰白色〜黄褐色を呈する。礫径2〜6cmの角礫が全体に点在し、下部では小礫〜細礫が葉理に沿って配列しているのが認められる。基質の粘土は硬い。

e.本流性低位段丘堆積物:

本堆積物は標高365〜380m付近に分布する。基盤岩との不整合面は、T6〜T5に向かって急速に低くなり、国道365号に向かってさらに徐々に低くなっている。中位段丘堆積物に比べ固結度が低いこと、段丘面の定高性が高く、面の保存がよいことから低位段丘と判断した。T5付近では下位の基盤岩をチャネル状に大きく削り込んで分布しており、チャネルの方向はほぼ南北方向で支流の方向とは斜交することから、本流性の堆積物と判断した。角礫混じり砂が主体で、下部は礫率の高い角礫である。暗褐色を呈し、一部に暗灰色の細砂〜中砂層の薄層を挟む。礫径は2〜35cmで、淘汰は悪い。下部には礫径約1.5mに及ぶ巨礫の多い部分も存在する。全般に固結度は低い。基質はシルト混じり細砂である。

2)基盤岩中の断層と破砕帯

基盤岩は全体に破砕を受け、せん断面が発達し、角礫化している。規模の大きな破砕帯はT8.3付近でみられ、幅約3mである。貫入岩起源(一部に原岩の組織を残す)で、にぶい黄色部分を呈し、強破砕されて粘土状になっている。断層面はかなり湾曲し、ほぼ北北西ー南南東走で東あるいは西に高角度で傾く。T6.8付近およびT11.5付近の破砕帯は、幅は1m以下で、緑色岩起源とみられ、暗青灰色あるいは暗灰色を呈し、強破砕され角礫〜粘土状である。