(4)音波探査

音波探査は海底下浅部の詳細な地質構造を明らかにすることを目的として

(イ)表層音波探査を、海底下深部の大規模な地質構造を把握することを目的として

(ロ)マルチチャンネル音波探査をそれぞれ実施した。

(a)調査方法

本調査の音波探査は、(イ)表層音波探査と(ロ)マルチチャンネル音波探査を同時に実施した。調査は図2−3−1−7に示すように、船尾からGIガンとストリーマケーブルを曳航し、調査船の舷側にソノプローブ送波器・受波器および音響測深機を設置して行った。調査船は図2−3−1−8に示すように速度を約3ノットに保ち、所定の距離間隔で音波の発振・受振を繰り返しながら調査測線上を航行する。

以下、各音波探査の調査方法について述べる。

(イ)表層音波探査

表層音波探査はソノプローブ音波探査装置を使用し、送波器を調査船の左舷側に、受波器を右舷側に設置し水深1.5mに沈めて調査を行った。送波器から発振された音波は、波長が短く、分解能が高い反面、減衰が大きい。そのため、受波器で受振した反射信号は受信機の増幅器により増幅され、船体雑音や直接波などのノイズを遮断するためフィルタを通し、記録器に送られる。ソノプローブ音波探査の観測条件を表2−3−1−5に示す。

(ロ)マルチチャンネル音波探査

マルチチャンネル音波探査では、音源にGIガンを使用した。音源から発振された音波は、海底面、地層境界面などで反射し、再び海面に戻ってきてストリーマケーブルで捕捉される。曳航されるストリーマケーブルは波浪、スクリューなどの雑音を避けるため出来るだけ船尾から遠く、海面下の適当な深度に沈められる。

ストリーマケーブルで捕捉された反射波は、船上の音波探査装置でアナログ信号からデジタル信号に変換され、磁気テープに収録される。

マルチチャンネル方式は、共通反射点(CDP)重合法とコンピュータによるデジタルフィルタ処理の適用により、従来のシングルチャンネル・アナログ方式による記録断面図と比べ、S/N(Signal/Noise)比の改善と地層分解能が飛躍的に向上する。

上記のCDP重合は、発振を計画測線上で等間隔で繰り返すことにより得られる記録を用いる。このため、調査船の直線誘導と発振点間隔の制御は、GPSからの信号を利用したX−Y座標データ処理機により行われる。

本調査の観測条件を表2−3−1−6に示す。

(b)音波探査装置

本調査で使用した(イ)表層音波探査装置および(ロ)マルチチャンネル音波探査装置について以下に述べる。

(イ)表層音波探査装置

表層音波探査で使用した機器は、海上電気(株)のSP−3W型ソノプローブ地層探査機で、表層音波探査装置の仕様を表2−3−1−7に、構成図を図2−3−1−9にそれぞれ示す。以下、各機能について説明をする。

1)送信機

AC100Vを高圧トランスで約DC1.5kVに昇圧整流して、コンデンサに充電する充電された電荷はトリガにより瞬間的な大電流として送波器に送られる。

2)送波器

送波器の主体である磁歪型振動子は、図2−3−1−10に示すようにニッケル薄板の成層円筒に被膜電線を単巻にしたものである。

振動子の振動は、電線にDC1.5kVの大電流を瞬間的に流すと、ニッケル薄板が磁化して伸縮することによって引き起こされ、振幅に対応する音波を水中に発振する。音波の周波数は3.5kHzである。

3)受波器

受波器は、海底面および地層境界面などで反射し、戻ってきた音波を受信し電気エネルギーに変換する。

4)受信機

受信機は、大別して増幅器、フィルタおよび電力増幅器から構成されている。

増幅器は、TVG(Time Variable Gaincontrol)回路を内蔵しており、音波の発振直後の強い直接音および残響を抑え、受振信号が時間とともに減衰するのを極力補償し、一様な出力になるようにする。

フィルタは低域および高域の遮断周波数を設定し、反射音波の信号を選別して通過させる。

電力増幅器はフィルタを通過した信号を、検波・変調、終段増幅、全波整流して記録器に入力する。

5)記録器

記録器は、受信機からの音響信号を変換して、海底面下の像を記録紙に連続的に描く。記録器のベルトは、1回転するごとに、発信機を1回発信させる。

6)同期電源機

同期電源機は60Hzの信号をつくり、これを電力増幅して記録器の同期モータに供給し、駆動させる。

(ロ)マルチチャンネル方式音波探査装置

マルチチャンネル音波探査装置の主要部分は、1)送信部のGIガン、2)受信部のストリーマケーブルおよび 3)デジタル探鉱機で構成されている。マルチチャンネル音波探査に使用した装置の仕様を表2−3−1−8に、構成図を図2−3−1−11にそれぞれ示す。以下、これら各部の機能について述べる。

1)送信部

音源は、高圧空気を利用して水中で音波を発生させるGIガンで、その動作原理を図2−3−1−12に示す。

GIガンは、ジェネレータおよびインジェクタと呼ばれる2個の空気室を装備しており、その動作原理は次のとおりである。ファイアリングユニットからジェネレータに発振信号が送られると、第1のパルスがジェネレータから発生する。このパルスの気泡が最大容積に達したとき、インジェクタの空気を放出すると、気泡内に高圧空気が注入される。注入された空気により気泡内圧と水圧とが平衡状態になるるので、ノイズの原因となる気泡振動が効果的に消去される。

GIガンに使用する空気は、145kg/cm2に圧縮されてエアボンベに貯留され圧力調整器(マニホールド)によって100kg/cm2の圧力に調整された後にエアガンの空気室に送られる。起動信号は、GPS測量により12.5mごとにデュアルファイヤリングユニットを通じて、GIガンの電磁弁に送られ、これを作動させる(図2−3−1−11)。

2)受信部

音源から発振された音波は海底面や海底面下の地層境界面などで反射し、再び海面に戻ってきてストリーマケーブルの受振素子に捕捉される。

ストリーマケーブルは、船尾から順にストリーマケーブルを水中に沈める比重の大きいトーイングリーダ、音波を受波するアクティブセクション、および安全航行のためのテールブイで構成される。

反射波を受波するアクティブセクションは、12.5m間隔で配置される48組のセクション(チャンネル)からなり、各セクションには5個の圧電型受振素子がそれぞれ格納されている。また、ストリーマケーブルには深度計と深度調整装置が12chごとに5箇所に装着され、常時、一定深度になるよう観測室で監視と調整が行われる。

3)記録部

ストリーマケーブルで受波された反射波は、記録部でアナログ信号からデジタル信号に変換(A/D変換)されたあと磁気テープに収録される。

記録部はデジタル探鉱機、パーソナルコンピュータ、モニタ記録器、ディスプレイおよびテープドライブで構成されている。このうち、デジタル探鉱機は反射信号に増幅、エリアス・フィルタ、A/D変換、ローカット・ハイカットフィルタなどを施し、パーソナルコンピュータへ転送する。転送されたデータは米国物理探査学会(SEG)により決められた書式のひとつであるSEG−Yフォーマットに変換され、テープドライブでDLT(Digital Linear Tape)に収録され る。

データの品質管理は、調査船に最も近いチャンネル(ニア・トレース)からアナログ信号をモニタ記録器に連続的に出力させると共に、デジタル化された発振ごとの全チャンネルの反射信号とニア・トレースギャザーをパーソナルコンピュータのディスプレイに表示させて行った。