(1)リニアメント判読

空中写真判読による活断層の認定の以下の手順(松田他、1977)に従っておこなった。この判読は、活断層研究会編(1980、1991)に準拠している。

(a)判読方法

(イ)活断層の疑いのあるリニアメントの抽出

線状に続く谷地形や崖、および異なる種類の地形境界等の地形的に続く線状模様(リニアメント)を抽出する。あるリニアメントを活断層と認定するには、同時時代の地形面あるいは地形線を基準(基準地形面)にしての変位を示す必要がある。一般には、各種の段丘面、侵食小起伏面、火山斜面などが基準地形面である。このほか、断層運動によって形成される断層変位地形(断層崖、低断層崖、逆向き低断層崖、撓曲地溝、断層池、地塁、横ずれ尾根や谷)が形成されるので、リニアメントに沿って断層変位地形の有無によって、活断層の認定をおこなう。

(ロ)確実度・変位の向きの表示 

活断層の認定に必要な基準地形面がリニアメント両側に分布していない場合、活断層の認定も不確かなものとなる。しかし、不確かなものであるからと言って活断層から除外することは、危険である。そこで不確かを確実度として表現している。

活断層研究会編(1991)によれば、確実度は・、・、・の3段階に区分され確実度・は、活断層であることが確実なもの、確実度・は、活断層であると推定されるもの、確実度・は、活断層の可能性があるが、他の原因も考えられるものとしている。本文もほぼこの基準に準拠し、確実なもの、やや確実なもの、不明瞭なものに大別している。   

(ハ)活動度判定

活断層の過去における活動の程度を活動度としている。活断層研究会編(1991)等では基準地形面や地層の変位量からA級、B級、C級に区分している。A級は平均変位速度1m/1,000年、B級は0.1m/1,000年、C級は0.01m/1,000年のオーダーとしている。本文において、変位基準が不明確であるため、各断層の活動度の判定はできなかった。

(ニ)空中写真判読結果

使用した空中写真は、国土地理院撮影の縮尺2万分の1赤外線写真と同1万分の1カラー写真である。判読した結果は、図2−2−2−1図2−2−2−2に示している。

(b)甲楽城断層南端の写真判読

(イ)従来の空中写真判読結果

空中写真判読および地形調査をおこなった文献によれば、「大谷−干飯崎間の海岸が断層海岸である」とされているが、空中写真で見ると海岸線はかなり屈曲があり、直線的なリニアメントとは認められない。陸上部では大谷と杉津の中間の沢(大谷沢と仮称)は直線的でリニアメントとして認められるが、その長さは約1.5kmである。このリニアメントは分水嶺には達していない。

大谷−甲楽城間の海岸線は、大縮尺の地形図(2.5万分の1以下)ではかなり凹凸のある海岸線となっている。この付近の海岸斜面の下半分は急斜面となっており、斜面の谷密度は小さい。谷は直線状で雨裂的な形状を示すが、上半分は下半分に比して(規模が)大きく、2〜3次の枝沢をもった水系を形成し、谷もやや深い。また、海岸斜面の頂部には截頭谷が見られる谷頭部が海岸斜面で跡絶えている。これらのことから下半分は新しい地形であり、海食崖と考えられる。また、海上保安庁水路部資料によると、「従来の海岸線から数100m沖合海底に大谷沢から干飯崎にかけて直線的に延びるリニアメント状地形は、干飯崎付近で消滅している。さらに、「甲楽城断層は東側隆起の縦ずれで大谷沢を通るとされているが、大谷沢の両側に分布する同時代と推定される扇状地は、標高的にほとんど差がない、また断層を覆って分布する大沢谷の扇状地の表面に変位は認められない。また、大谷沢を通るリニアメントの両側の山頂および尾根に分布している小起伏面に高度差は、認められない(日本原子力発電株式会社:1979)」としている。

(ロ)判読結果

文献の甲楽城断層に相当する不明瞭な〜非常に不明瞭なリニアメントは、大沢谷入り口付近から南東方向の直線谷までの約1.6kmの長さにわたって判読できる。大沢谷入り口付近では、リニアメントは沢の中央の北側の標高50mの扇状地(低位段丘)の端を横断すると判断されるが、同箇所にリニアメントはほとんど判読できない。

甲楽城断層末端の南南東方向には短い直線谷があり、不明瞭なリニアメントと判読できる。さらにその延長上の谷および尾根に、リニアメントは判読できない。

ほとんど判読できない部分も含めると陸域での長さは約1.5kmである。

(c)山中断層の判読結果

甲楽城断層南端の約400m北東側には、北東−南西方向を示す長さの短い複数のリニアメントとして判読でき、従来山中断層(活断層研究会編,1991:地質調査所1994)とされているものに相当する。

判読要素は短い直線谷と尾根鞍部で、左横ずれの谷尾根の屈曲(横ずれ変位量100〜300m)が報告されているが、明瞭ではない。また、屈曲河谷間の尾根にはリニアメントは認められないし、尾根の変位も明瞭ではない。

北半分は不明瞭な複数の、南半分はより不明瞭なリニアメントとして判読できる。それら極めて不明瞭は部分も含めた長さは約5kmである。

断層地形を示唆するリニアメント以外に浸食の差異に基づく組織地形が読みとれる。それを組織地形を反映した水系として図示している。

(d)柳ヶ瀬断層

(イ)従来の空中写真判読結果

空中写真判読および地形調査をおこなった文献では「余呉川−五位谷川−高時川上流−孫谷川上流部は直線谷をなし、木之本町木之本から今庄町上板取付近の二ツ屋跡までリニアメントが認められる。直線谷両側の山脚には三角末端面が、発達する」とし、明瞭なあるいは比較的明瞭なリニアメントとそれに沿って大小様々な規模の三角末端面を図示している。

上板取以北の二ツ屋跡まで比較的明瞭なリニアメントは、鉢伏山から北北東に延びる山中をとおる。この間、「リニアメント北部の上板取付近に左横ずれ的地形が見られるが、局所的で明瞭でない」としている。さらに、「二ツ屋跡から北北西方向の延長上に、ケルンコル、ケルンバット状地形を認め、長さ約2kmの不明瞭なリニアメントとして(日本原子力発電株式会社:1979)」図示している。

(ロ)判読結果

柳ヶ瀬断層は板取付近以南で、両側に三角末端面を伴う直線的で明瞭な断層谷として判読される。このうち、栃ノ木峠から板取まで、山地と谷平地との直線状境界、山腹斜面の僅かな傾斜変換部を明瞭なリニアメントとして判読している。谷中の土石流を横断する箇所で、リニアメントは判読できない。

板取から北の二ツ屋跡付近にかけて不明瞭ながら尾根鞍部、直線谷、不明瞭な三角末端面として、断続するリニアメントが判読される。しかし、更に北北東延長の長さ約1.5km程度は、極めて不明瞭なリニアメントであり判読することが難しい。