(2)トレンチ調査結果

伊予断層では,平成9年度に,高野川,市場A,市場Bの3地点でトレンチ調査を実施した。

[高野川トレンチ]

双海町高野川地点では,LU段丘面に認められる比高約1.3mで南に傾斜する低崖(Aランクのリニアメント)を対象にトレンチ調査を実施した。

トレンチ調査によって段丘堆積物中に少なくとも2回の断層運動が確認された(図4−2−2)。本トレンチによる伊予断層の活動履歴は,ボーリング調査結果を加味すると,次の通りである。

@最新活動時期:約11,000年前以降

A1つ前の活動時期:約26,000年前〜29,000年前

B1回当たりの鉛直変位量:約1.5m

C1回当たりの水平変位量:不明(鉛直変位に比べて著しく大きくはない)

D 平均活動間隔:8,000年〜9,000年

E 平均鉛直変位速度:0.17m/千年

ただし, 当地点では, 最新と1つ前の活動間隔が15,000年以上であるのに対して, それ以前の活動間隔は3,000年〜5,000年間隔と推定される。これが正しいとすると,高野川地点の伊予断層は, 最近約20,000年間はあまり活動的でない可能性がある。

[伊予市市場A地点]

当地点は,LV段丘面上に位置するが,変位地形を示す崖地形などは認められない。

トレンチ調査の結果,伊予断層本体に対比される和泉層群破砕帯と流紋岩(中新世中期の石鎚層群に属すると推定される)貫入後の断層活動が確認された(図4−2−3)。流紋岩北縁の断層を覆う堆積物(14C年代値:11,660±50y.B.P.)には断層変位は認められなかった。

また,流紋岩の南縁の断層は, 水路のため観察できなかったが,最新の活動を示す断層は流

紋岩の南縁を通る可能性がある。

以上の調査結果をまとめると,当地点における活動履歴は次のようになる。

@流紋岩の北縁の断層:約12,000年以降の活動はない。

A流紋岩の南縁の断層:水路のため観察不能。

[伊予市市場B地点]

伊予市市場から稲荷にかけて,山裾にリニアメント(Bランク)が判読される。伊予市市場B地点は,この延長部にあたる。当地点はLV段丘面上に位置しており,伊予断層が推定されるが,断層変を示す崖地形は認められない。

トレンチ調査によって, LV段丘堆積物下部の細礫礫層(C層)堆積中に断層運動が推定された(図4−2−3)。 ただし,堆積物を変位させる断層が複数あること,鉛直方向のみかけの断層変位量が約10cmと大きくないことから,伊予断層本体の活動に伴い二次的に活動したことも考えられる。

伊予断層の活動履歴は以下の通りである。

@活動時期 :約6,300年前〜11,000年前

A鉛直変位量:約10cm

B水平変位量:不明