(1)地表踏査

「本郷」地点の1/2,500地形地質分類図を図3−2−1に示す。

1) 地 形

上野地区東部,本郷地点周辺では,石鎚山脈より北流する渓流によって形成された扇状地性の低位段丘面が山麓部に広く分布している。

三波川変成岩類からなる石鎚山脈と丘陵を形成する低位段丘面との地形境界には,西南西−東北東方向にBランクのリニアメントが断続的に判読される。リニアメントは主に北側低下の低崖からなる。千足神社東方の本郷地点周辺では,局所的に南側低下のリニアメントからなる。このリニアメントは,長さ50mにわたり見かけ上南側低下を示す最大比高3mの低崖からなり,地形境界に沿って東西方向に分布する凹地の北壁をなしている。周辺の渓流は南北方向の流向でリニアメントに直交し,西方延長部でも同様の凹地が認められる。この凹地は,断層活動によって形成されたものと判断される。

本地点の東方では,リニアメント北部に北へ緩く張り出した小規模な土石流扇状地面が認められる。この土石流堆積物の供給源先を南方の山側に求めると,約100m西方の渓流と考えられ,土石流扇状地面は石鎚断層の断層運動によって約100m程度右横ずれ変位したものと推測される。

2) 地 質

本郷トレンチ調査地点付近には,丘陵側に低位段丘堆積物(LV相当)が,山地側に三波川結晶片岩類が分布している。トレンチ地点のリニアメント北側の平坦な高まりには,中位段丘相当層が,リニアメント南側の凹地には沖積層相当の堆積物が薄く分布している。

中位段丘相当層は礫混じりシルト層からなる。本層は表層部では赤色風化が著しく,粘土化している。礫はクサリ礫化した亜角礫の結晶片岩礫からなる。礫径は5〜10cmを主体と全般に淘汰がよい。

沖積堆積物は,シルト層と砂礫層からなる。礫は主として角礫状の泥質片岩礫で構成されている。トレンチ調査で南端部には泥質片岩の転石や土石流堆積物が観察できることから,トレンチ周辺の断層南側の斜面には崖錐堆積物が広く分布しているものと推察される。

なお,岡田・堤(1990)は,千足神社北の泉第一橋から東方約10mの低位段丘面中の堆積物(地表面下約3〜4m)から,明瞭な淡赤黄色のテフラ(砂混じりであるので再堆積と見なされている)が観察され,それは姶良Tn火山灰(AT)と同定されることを報告している。