3−11−4 反射法地震探査

本地区では,米湊断層の東方延長と伊予断層との関係を把握する目的で,平成8年度に愛媛県が実施した反射法地震探査測線(C測線)の延長で,ほぼ西南西−東北東方向に延びる沖積面(AU面)と低位段丘面(LV面)との地形境界線にほぼ直交する方向で,測線長1,100m,受振点間隔10mの反射法地震探査を実施した。測線位置を図3−11−6に,1996年度に実施したC測線の探査結果と,今回の探査結果を併せた解釈断面図を図3−11−7に示す。図3−11−7中の数字は速度解析により得られたP波速度推定値を示したものである。

図3−11−7によれば,平成8年度探査C測線のCMP120では,Bランクリニアメントに対応する箇所で,重力滑動に起因すると考えられる根なし断層が認められ,音地測線のCMP40〜120の深部で,和泉層群と郡中層相当層が接する逆断層が認められた。しかし,CMP80付近の沖積面(AU)と低位段丘面(LV)との地形境界では断層や撓曲構造は認められなかった。

測線沿いの地質は,P波速度,反射面の強さ等から,地表から標高0m付近までは沖積堆積物,低位段丘堆積物,標高−80m付近までは更新統前期〜中期の八倉層相当層,標高−270m付近までは鮮新統〜更新統前期の郡中層相当層,それ以深は和泉層群に対応するものと推定される。八倉層相当層はP波速度が約2,200m/sec未満,郡中層相当層は2,200〜2,600m/sec程度,和泉層群は3,000m/sec以上と考えられる。音地測線CMP40〜210,深度250〜350m付近の和泉層群では,P波速度が2,700〜3,900m/sec程度で新鮮な和泉層群としては速度値が小さい箇所を多く含む。

この低速度値を示す和泉層群のブロックの下位,CMP40〜120,標高−420m付近では,強い反射面が認められ,不整合面の食い違いから,和泉層群と郡中層相当層が接する逆断層が推定できる。断層が測線の端にあるため,断言はできないが,和泉層群より上方の郡中層相当層に明瞭な変形構造が認められないことから,その活動度は低いものと考えられる。

以上のように,第四紀後期の地層まで変位・変形を与える米湊断層は,本調査地域では認められなかった。このため,米湊断層の活動度を評価するためのボ−リング調査は,模式地である米湊地区で実施した(V.12章 参照)。