(3)活動履歴

1) イベントT(最新活動時期)

トレンチ壁面の観察から,最新活動時期と考えられるイベントはE層堆積後,D層堆積前である(図3−10−5図3−10−6)。14C年代測定によれば,D層中の炭からは1,200±70y.B.P.,E層中の腐植土からは1,120±70y.B.P.の年代値が得られている。D層中の年代値はE層のものよりもやや古い値が得られており,再堆積による可能性があるので,イベントTの時期としては,1,120±70y.B.P.前後(AD765〜1,025年)と考えられる。

2) イベントU

トレンチ壁面の観察から,イベントUはG層堆積後,E層堆積前である。14C年代測定によれば,E層中の腐植土からは1,120±70y.B.P.,G層下位のH層中の堆積物からは2,930±120y.B.P.の年代値が得られている。従ってイベントUは2,930±120y.B.P.〜1,120±70y.B.P.と考えられる。

3) 地層の乱れから示唆される活動時期

トレンチ壁面の観察から,C層及びD層中に含まれる細礫は,下位層から吹き上げられるように配列しており,地層の流動化が生じた可能性が高い。流動化跡の存在は,断層活動による地震動を反映しているものと考えられる。両層は変形を受けていいB層に水平に覆われており,C層堆積後,B層堆積前に地震動が発生したと推定される。14C年代測定によれば,B層中の材からは190±70y.B.P.(暦年代:AD1,645〜1,950年),C層中の材からは610±50y.B.P.(暦年代:AD 1,285−1,420)の年代値が得られており,年代測定結果と照らし合わせれば,地震動は歴史時代に起こったことを示している。しかしながら,池田断層による歴史時代における地震活動の記録は,現在まで発見されていないため,今後,歴史資料の見直しなどの検討が必要と考

えられる。

したがって,ここでは確実度は低く,断言できないものの,610±50y.B.P.〜190±70y.B.P. (AD1,420〜1,645年)に地震動を受けた可能性がある。