(3)リニアメント

以下に,空中写真で判読したリニアメントの地表踏査(概査)結果を述べる。

@ Ik−1リニアメント

大町〜東金川にかけて分布する本リニアメントに沿って,断層露頭は確認されなかったが,広島大学(1996)によって石床の開析谷(沖積面)で実施されたトレンチ調査およびジオスライサー調査で活断層が確認されている。

また,当リニアメントは,扇状地面中の比高0.5〜5mの低崖と対応する。この低崖の走向はほぼ東北東−西南西方向であり,法皇山脈から北流する河川とほぼ直交していること,扇状地面は北へ緩やかに傾斜していること,低崖の南に陥没池(中曽根町石床の新池)が認められること,低崖の延長上の大谷川(中之庄町)で右横ずれ屈曲(約80m)が認められることから,断層運動によって形成された低断層崖であると判断される。

A Ik−2リニアメント

三島公園〜西金川にかけて分布する本リニアメントに沿って,断層露頭は確認されなかった。当リニアメントが通過する三島公園の鞍部(ここでは,Cランクのリニアメントとして判読)では,公園造成中に,南側の破砕された三波川変成岩類が走向・傾斜N70°E・40〜50°Sの逆断層面を介して,固結度の高い崖錐性の角礫〜亜角礫層上にのりあげる露頭が報告されている(岡田,1973aなど)。当断層露頭は,背後に大きな地すべり地形が認められることから,異地性岩塊の可能性がある。

また,当リニアメントが判読される三島公園南東方の老人福祉センター北側の切土法面(Cランク),川之江市川之江学園南東の林道沿い(Dランク)には,三波川変成岩類の角礫岩を主体とする地すべり・土石流堆積物の露頭が確認できるものの,断層の存在を示唆する変位地形は認められなかった。

したがって,当リニアメントの成因は,分布や連続性が悪く,延長距離も短いことから,断層運動などによる変位地形ではなく,侵食などによって形成された可能性が高い。

B Ik−3リニアメント

当リニアメントは,三島公園南方の明瞭な地すべり地形内に傾斜変換線として断続的に判読されるが,断層露頭は確認されなかった。変位地形の可能性が非常に低いリニアメントであるが,当リニアメントのすぐ南を地質境界としての断層が通るものと推測されることから,本リニアメントは地すべりにより移動した地形を判読している可能性がある。

 

C Ik−4リニアメント

横川〜境目峠にかけて分布する当リニアメントは地質境界断層と一致し,中通と川之江市久保内で断層露頭が確認できる。

中通で認められる断層露頭では,強風化した頁岩(和泉層群)と擾乱され,かつ風化が著しい泥質片岩(三波川変成岩類)が幅50cmの珪長岩の貫入岩を介して接しており,貫入岩に破砕は認められない。断層の走向・傾斜や周辺の地形状況から,重力滑動により,上方から移動してきた地すべり岩体と推察される。

川之江市久保内で認められる断層露頭では,三波川変成岩類中に幅50cm程度の破砕された角礫帯(一部粘土化)が認められる。断層の走向・傾斜はN70°W・70°Nを示す。

また,当リニアメントは,三波川変成岩類からなる山体と段丘面との地形境界に認められる低崖に対応する。金田町半田,川滝町田尾・寒之池ではこれらの低崖を挟んで,河谷の右横ずれ屈曲が認められ,低崖の延長方向は北流する河川と直交することから,これらの低崖は断層運動によって形成された低断層崖と考えられる。

D Ik−5リニアメント

横川付近に認められる当リニアメントに沿って,断層露頭は確認できなかった。当リニアメントは,三波川変成岩類の地すべり地形中の比高10m以下の低崖に対応するが,変位地形である可能性は低い。地質境界断層を反映したリニアメントである可能性はあるが,その連続は断片的で,地すべり堆積物に覆われ不明である。