(1)ボ−リング調査

1) 概  要

新居浜市岸ノ下東(B)地点では,試掘によって断層を確認したため,トレンチ調査後にトレンチ調査で把握できない深部の層序の確認と累積変位の解明,年代測定試料を採取することを目的に,トレンチ北端から北方へ約10m離れた地点でボーリングKiB−1(L=19m)調査を実施した(図3−4−2)。

2) 調査結果

岸ノ下東(B)地点のボーリング調査による地質断面図を図3−4−12に示す。KiB−1ボーリング地点の地質は以下のように区分される。なお地質区分はトレンチ結果に基づいて作成した。

ボーリング地点における沖積層はトレンチ断面のC層を除くA〜L層が北へ傾いて分布し,トレンチ壁面で観察される地層と良く対応できる。各層の特徴は以下の通りである。

KiB−1 孔口標高:40.5m,掘進長:10.00m

・0〜0.25m

褐色礫混じりシルトからなる耕作土

・0.25〜1.05m

黄灰色を呈し,径1cm前後の小礫を混じえる中〜細粒砂層。本層はトレンチのA層に相当する。

・1.05〜1.95m

暗灰色腐植質砂層。木片および腐植物を多量に介在し,ややシルト質である。本層はトレンチのB層に相当する。

・1.95〜2.80m

黄褐色シルト質砂層。少量の礫を混じえる細砂でシルト分多い。本層はトレンチのD層に相当する。

・2.80〜3.70m

灰褐色腐植物混じり砂礫層。腐植物を混じえる細砂で,径1cm前後の結晶片岩礫を介在する。本層はトレンチのE層に相当する。

・3.70〜4.45m

灰色砂礫層。礫は新鮮硬質な結晶片岩主体で径1〜3cmの亜円礫である。本層はトレンチのF層に相当する。

・4.45〜5.00m

黒褐色腐植質砂層。腐植物が多く単位体積重量は非常に軽い。本層はトレンチのG層に相当する。

・5.00〜5.80m

灰褐色砂層。少量の腐植物を混じえる細砂で部分的に結晶片岩の小礫を介在する。本層はトレンチのH層に相当する。

・5.80〜6.65m

灰色砂礫層。礫は新鮮硬質な結晶片岩主体で径1〜3cmの亜円礫である。本層はトレンチのI層に相当する。

・6.65〜8.85m

灰褐色腐植物混じり砂層。腐植物を混じえる細粒砂で,部分的に結晶片岩の小礫を介在する。本層はトレンチのJ層およびK層に相当する。

・8.85〜10.10m

灰色砂礫層。礫は新鮮硬質な結晶片岩主体で径1〜2cmの亜円〜偏平板状礫である。砂は中粒砂〜細砂からなり少量のシルト分介在する。本層はトレンチのL層に相当する。

・10.10〜10.70m

暗赤褐色腐植質粘土層。径1cm程度の片岩礫を介在する腐植質粘土で,14C年代測定結果(26,790±60y.B.P.)からLV段丘堆積物と考えられる。また花粉分析から,ヨモギ属等の草本花粉が抽出された。

・10.70〜13.80m

灰色シルト混じり砂礫層。礫は中硬質〜硬質な結晶片岩で径1〜3cmの亜円礫〜偏平板状礫であり,これを砂および半固結状のシルトが充填する。花粉分析により,本層は約29,000年前頃の堆積物であり,LV段丘堆積物であると考えられる。

・13.80〜19.00m

灰〜褐色シルト質砂礫層。礫は中硬質〜軟質化する結晶片岩主体で径1〜5cmの亜円礫〜偏平板状礫であり,これを褐色化した砂およびシルトが充填する。本層は層相から岡村層であると推定される。

@ 沖積層

ボーリング地点における沖積層はトレンチ断面のC層を除くA〜L層が北へ傾いて分布し,トレンチ壁面で観察される地層と良く対応できる。

A LV段丘堆積物

ボーリング孔の深度約10m付近に確認されたT層は,その層相や締まりの程度からここに沖積層と段丘堆積物との不整合が想定される。段丘堆積物はトレンチには露出しないが,トレンチ南側の比高約2m程度の小段丘構成層と想定される。また,さらに下位に分布するV層はその層相から岡村層と推定される。

B 累積変位量

本地点における断層を挟んだ約1万年前の堆積物であるG層の高度差は約10m以上である。また,断層を挟んだ約2.7万年前の腐植土の高度差は,岡田・堤(1990)の露頭と比較すると,約15mと推定され,いずれも南上がりの変位を示している。