(3)活動履歴

1) イベントT(最新活動時期)

トレンチ壁面の観察結果から、最新活動時期と考えられるイベントTは,B層堆積後,A層堆積前である。B層中のシルト混じり砂礫層からは,1,770±40y.B.P.,2,850±70y.B.P.,3,340±90y.B.P.,A層中の黒褐色礫混じりシルトから2,350±120y.B.P.,2,210±50y.B.P.の14C年代値が得られている(表3−3−5−1表3−3−5−2図3−3−8図3−3−9)。これら14C年代値は,堆積物の性状から,現地性の腐植質シルトではなく,再堆積した古い炭質物の年代値を示している可能性が高い。

本トレンチの堆積物は堤ほか(1998)のスケッチと比較すると,B層はT層下部に対比され,またA層はT層上部にそれぞれ対比され,T層下部からは1,170y.B.P.,1,350y.B.P.の14C年代値が報告されている。堤ほか(1998)は,T層は最新のイベント後の堆積物と判断しているが,本トレンチ調査から推定すると,T層下部は断層変位を受けている可能性が高い。これは堤ほか(1998)のスケッチからも推測できる。

したがって,本地点における最新活動時期は本調査からは少なくとも1,770±40y.B.P.以降で,堤ほか(1998)の14C年代値によれば,1,170y.B.P.以降の可能性も考えられる。

2) イベントU

西面では,F1断層はE層を変位させ,C層に覆われている。したがって,E層堆積後,C層堆積前にイベントUが推定される。E層からは14C年代値は得られていないが,その下位のF層の腐植土から4,070±60y.B.P.が得られている。これは,堤ほか(1998)の年代値(4,040y.B.P.)とほぼ一致している。

これに対して,C層中の褐色シルト質砂からは5,350±40,5,570±60y.B.P.の14C年代値が得られたが,層序的に矛盾している。上位のB層からは,1,770±40y.B.Pの14C年代値が得られている。なお,C層に対比される堤ほか(1998)のU層からは1,920y.B.P.,V層からは1,950y.B.P.の14C年代値が得られており,これは層序と整合的である。

したがって,イベントUは,4,070y.B.P.〜1,770y.B.P.と考えられる。また,堤ほか(1998)の14C年代値を参考にすると4,040〜1,950y.B.P.と推定される。

3) イベントV

トレンチ調査により,堆積物の傾斜の急変から,イベントVはG層堆積後,F層堆積前と判断した。F3断層がG層中で消滅することも,これを支持している。G層からは,3,990±70yBP,F層から4,070±60yBPの14C年代値が得られている。これは,層序と矛盾するが,誤差の範囲内の値である。したがって,イベントVの時期は約4,000yBP前後と考えられる。

4) イベントW

イベントWは確実度は低いが,I層とH層との間に推定される。I層からは5,050±60y.B.P.の14C年代値が得られている。したがって,イベントWは5,000〜4,000y.B.P.の間と推定される。