(1)地形・地質の概要

(1) 地 形(図2−1−1

調査地域の地形について,岡田(1973b)は以下のようにまとめている。

石鎚断層崖の北麓に沿って,幅7km以下,長さ約50kmの狭長な予讃廻廊地帯がある。西縁は高縄山地東面の断層崖でたたれ,東縁は川之江市付近から始まる讃岐山脈で限られている。

この低地帯には和泉層群よりなる二つの丘陵性山地があり,西方を船山丘陵,東方を関川丘陵と呼ぶ。これら丘陵の南側は断層によって限られ,周辺は沖積面に囲まれて孤立している。これらの稜線高度は150〜250mで,極めて定高性がよい。

周桑(道前)平野は主に中山川と高縄山地を開析して東流する河川の作る扇状地性の平野である。西条平野の中心部は非常に低平で,沖積海進時には海底であった。この上に加茂川の沖積扇状地が張り出している。新居浜平野は東川・尻無川・国領川などの河川が形成した合流扇状地性の沖積平野で,この先端は一部を陸繋している。宇摩平野は関川の扇状地ないし三角州性の平野で,山麓部には断層変位を受けた幅の狭い段丘面群が縁取っている。東予(三島〜川之江)平野は複合合流扇状地性の平野で,北端の一部には海食崖がみられる。背後の断層崖が相対的に低くなり,大きな河川による物質供給が少なく,さらに海食作用による後退を受けて,この付近での平野の幅は1km以下と狭くなっている。

廻廊地帯の北側は瀬戸内海の燧灘に接しているにもかかわらず,海岸に面したどの場所にも海成段丘らしき地形は認められない。岬や島および扇状地の北端の一部では,現在ないし沖積海進時の形成と思われる海食崖はみられるのに,隆起海食崖状の地形が見あたらない。新居浜付近では基盤岩類よりなる丘陵が沖積面上に突出して,沈水型の地形模様をしている。

石鎚および岡村断層崖の北麓に近接して,扇状地が開析されて段丘化した地形面が見られる。これを構成する堆積物は,通常径数10cmまでの角礫・亜角礫ないし亜円礫を主とし,シルト〜粘土・砂などの薄層を一部に挟むことがある。層理は一般に不明瞭であり,分級度もよくない。礫種はほとんど結晶片岩であり,そのうちでも扁平な黒色片岩が卓越する。一部の地域では,礫層の基盤をなす和泉層群から由来した砂岩や頁岩の礫がごくまれに含まれることがある。

(2) 地 質(図2−1−2

調査地域の地質について,高橋(1991)は以下のようにまとめている。

和泉層群は,大局的には東にプランジした非対称向斜構造を呈して,中央構造線に沿って細長く,紀伊半島から伊予灘に浮かぶ愛媛県喜多郡長浜町青島まで,約300kmにわたって最大幅12kmで分布する。本層群は,礫岩,砂岩,泥岩よりなるが主に砂岩と泥岩の互層より構成され,数層準に酸性凝灰岩層を挟む。

中央構造線の南側は三波川帯と呼ばれ,領家変成岩類と対をなす低温高圧型の三波川変成岩類が分布する。本変成岩類は,緑色(塩基性)片岩,黒色(泥質)片岩,砂質片岩,石英片岩などよりなりキースラガー式鉱床を胚胎する。三波川変成岩類は,久万層群や中部中新統石鎚層群に不整合に覆われる。

久万層群は石鎚山系に広く分布し,主に礫岩からなり砂岩や泥岩を挟む堆積物である。久万層群は三波川変成岩類の砕屑物だけからなる下位の二名層(海成)と和泉層群由来の砕屑物を主とする上位の明神層(湖沼〜河成)とに分けられている。

石鎚層群は,中期中新世の火山砕屑物や火山岩類よりなる。石鎚山南西方に分布する面河酸性岩類もこの層群に含められている。石鎚層群は久万層群を不整合に覆い,さらに中央構造線を覆うばかりでなく,その北方に分布する和泉層群をも不整合に覆っており,中央構造線の活動史を考察する上で重要な位置を占めている。石鎚層群形成時の火成活動は瀬戸内火成活動と呼ばれ,火山岩類が愛媛県では三波川・領家両帯に,香川県では領家帯に分布するほか,愛媛県下の中央構造線に沿っても貫入している。

岡田(1973a)によると,小松町南西部の小松丘陵の北端には礫層下には岡村層が露出している。これはいちじるしく変形しており,層理は走向N70゜〜80゜E,傾斜55゜〜65゜Nを示す。包含される植物化石から,第二瀬戸内統に属する上部鮮新統(ないし下部更新統)とされ,松山南方の郡中層に対比されている。

図2−1−1 愛媛県東部の中央構造線活断層系(Tsutsumi & Okada,1996)

図2−1−2 愛媛県東部の中央構造線沿いの地質(高橋,1996)