(1)和泉層群

〔分布と岩質〕

和泉層群は,伊予断層の南東側に主として分布するが北西側にも伊予三秋において, 郡中断層との間に, また市場〜八倉とにおいても,八倉層中に分布する。

南東側の和泉層群は,下位から下部泥岩勝ち互層,中部砂岩勝ち互層および上部泥岩勝ち互層とから構成される。

下部泥岩勝ち互層は,双海町上灘付近に分布し,厚さ数p〜数10pの泥岩と数pの砂岩との互層からなる。泥岩は黒〜黒灰色を呈し,細片状に割れやすい。

砂岩は灰黄色〜灰緑色を呈し,細粒で,級化層理に乏しい。

中部砂岩勝ち互層は,双海町高野川付近の分布し,厚さ数10pの砂岩と数p未満の泥岩との互層からなる。砂岩は灰黄色〜灰緑色を呈し,中粒で,級化層理に富む。泥岩は黒〜黒灰色を呈し,砂粒を含む。中部層中には,厚さ1m程度の酸性ガラス質凝灰岩がはさまれる。

上部泥岩勝ち互層は,伊予市三秋から八倉にかけて広く分布し,厚さ数10pの泥岩と数p〜数10pの砂岩との互層から構成される。泥岩は黒〜黒灰岩を呈し,細片状に割れやすい。砂岩は灰黄色〜灰緑色を呈し,細粒で,級化層理に乏しい。やや厚い砂岩ではしばしば級化層理が認められる。本部層中には,厚さ2〜3mの酸性凝灰岩がはさまれており,連続性が良いため,鍵層となっている。

北西側の和泉層群は,下部砂岩勝ち互層と上部泥岩勝ち互層とに区分される。

下部層は,伊予市銭尾峠以西に分布し,厚さ数10p〜3mの厚い砂岩と数p未満の泥岩からなる砂岩勝ち互層から構成される。砂岩は灰黄色〜灰緑色を呈し,中粒で,級化層理に富む。泥岩は黒〜黒灰色を呈し,砂粒を含む。下部層中には厚さ1m程度の酸性ガラス質凝灰岩がはさまれる。

上部層は北東部の伊予市下三秋北方に分布し,数p〜数10pの砂岩を挟む泥岩勝ち互層から構成される。

〔地質構造〕

伊予断層の南東側の和泉層群は, ENEへプランジする向斜構造を形成している(西村,1984;高橋, 1986)。このため,中部砂岩勝ち互層と上部泥岩勝ち互層との境界および凝灰岩層は,東に開いた馬蹄形を描いている。

向斜軸は,N65°E の走向で,端から岡田,大平,谷上山を通る。そして,高野川北方で伊予断層に切られている。向斜軸の南東側では,和泉層群は,一般にN50°〜70°Wの走向で, 北西へ30°〜40°傾斜している。一方, 向斜軸の北側の和泉層群は,N30°〜50°Eの走向で, 南東へ50°〜80°傾斜している。そして傾斜は,伊予断層に隣接するほど高角度になっている。

なお, 三秋から端にかけて, 伊予断層とJR予讃線とに挟まれた丘陵では,岩盤クリープによって地層が南東側に倒れ込み,地層は南東上位であるが,北西傾斜となっている。この岩盤クリープは,現在の北西−南東方向の小谷によって切られているため,小谷形成前に形成されている。

伊予断層と郡中断層との間に分布する和泉層群も東へプランジする向斜構造を形成している。このため,下部砂岩勝ち互層と上部泥岩勝ち互層との境界は,折戸の北西で東に開いた馬蹄形を描いている。向斜軸は,N60°E の走向で,Loc.11から中村を通る。すなわち,この向斜軸は,伊予断層南東側の向斜軸とほぼ平行で,伊予断層とは斜交している。向斜軸の南東側では,和泉層群の走向・傾斜のばらつきが著しいが,概ねN30°〜70°W の走向で,北へ20°〜50°傾斜している。一方, 向斜軸の北側の和泉層群の走向, 傾斜も非常にばらついているが, 全体としてNE走向で,南東へ傾斜している。

伊予断層と郡中断層との間に分布する和泉層群は,不規則な開口割れ目の発達した緩みの著しい岩盤で,全体として岩盤すべりによる変形を受けた可能性が指摘されている。(長谷川,1993:図4−4−4 参照)。

図4−4−4 伊予断層北西側に分布する不規則な開口割れ目の発達した和泉層群砂岩泥岩互層(伊予市下三秋,Iy−11 )

また, 同様の岩盤は, 伊予断層に沿ってほぼ全域に分布している。特に,伊予市市場〜八倉にかけて,八倉層と一体となって伊予断層北側の丘陵を構成する和泉層群は,八倉層中の根なし滑動岩塊であると推定され,反射法地震探査によっても確認されている。