(1)伊予断層沿い

(双海町高野川付近)

高野川付近では海抜20〜50mにかけて,やや東部の端付近では,海抜50〜80mにかけて比較的平坦な段丘面が発達しており,堆積面の開析状態および礫層中に挟まれる腐植土の14C年代(>4万 B. P.)から,LT段丘面(武蔵野面相当,約5〜6万年前)と考えられる。ただし,本面のかなりの部分は,より新期の姶良Tn火山灰を挟む扇状地〜土石流堆積物によって薄く被覆されている。

岡田(1972)の指摘した中位段丘面上の比高1〜2mの逆向き低断層崖では,Ld面を変位させている可能性が高いことから,Aランクのリニアメント(L1)として判読される。

(伊予三秋銭尾峠付近)

伊予地区清掃センター進入路で認められる比高約5〜6mの崖(岡田,1972)は,LT面とLU面(立川面相当,約2〜3万年前)とを境する。この崖は,ほぼ伊予断層のトレースと一致することから,伊予断層による低断層崖の可能性が高く,Aランクのリニアメント(L3)として判読できる。このリニアメントを境にして,LTおよびLU面を開析する谷が約 3.3m右屈曲している。これは,LU面形成後の伊予断層による右横ずれ変位を示している可能性がある。また,LT段丘と山地の境界も直線状ではあるが,段丘面の変位が確認出来ないことからCランクのリニアメント(L2)として判読される。

銭尾峠付近では,直線状の谷,尾根および河谷の屈曲としてBランクのL3リニアメントがほぼ直線に連続する。

L3リニアメントに沿う河谷はほぼ系統的な屈曲を示し,最大右屈曲量は400mに達する。河谷の右屈曲量は,以下のとおりである(図3−4−1−2)。

この屈曲は, 河谷が開析した丘陵上部に残っている八倉層相当層堆積後に形成された可能性が高い。ただし,L3リニアメントは,それに沿う第四紀後期の段丘面の変位が不明であるため,Bランクとした。

河 谷 A − A’: 100m

河 谷 B − B’: 70m

河 谷 C − C’: 150m

河 谷 D − D’: 200m

河 谷 E − E’: 300m

河 谷 F − F’: 380m

河 谷 G − G’: 400m

河 谷 H − H’: 400m

(伊予市下三秋)

下三秋付近では, 崖錐およびLU段丘上に低崖が判読されるが連続性に乏しく,重力による滑落崖の可能性もあるため,Cランクのリニアメント(L4,L5)として評価される。

(伊予市向井原)

当地区における森川のLUおよびLV段丘面上には, 変位地形を示すリニアメントは判読されない。

(伊予市市場〜稲荷)

当区間では,尾根および河谷の系統的な右屈曲が認められる(岡田, 1980・後藤1990)。この区間の河谷の右屈曲量は60〜 100mで明瞭であるが, 第四紀後期の段丘面の変位地形が不明であるため,Bランクのリニアメント(L6)と評価される(図3−4−1−2)。

後藤(1996)は, 当地区の右屈曲を検討し, 中位U面を開析する谷(4)の右屈曲量を80mと推定している。本調査では,右屈曲量については,同じ見解であるが,ピット掘り調査から後藤(1996)の中位U面をH面と推定した。

(伊予市上吾川〜上三谷)

当区間では,尾根と河谷の右屈曲がN60°Eの方向に直線状に連続し,BランクのL6リニアメントの延長部として追跡される。また,下三谷では,右屈曲を示すL6リニアメントの 100m北側にCランクのリニアメント(L7)が,さらに北側300 〜 400mにC〜Bランクのリニアメント(L9)が判読される。

最も北側のL9リニアメントは, LU面上に湾曲する低崖およびLT面のたわみとして判読され,縦ずれが卓越する可能性が高いが,連続性がやや低く,またLV面に認められないことから,B〜Cランクと評価した。これに対して,L7リニアメントは,尾根鞍部や河谷尾根の右屈曲からなるが,LU面には判読できず,また連続性も悪いため,Cランクと評価した。

(伊予市原〜宮ノ下)当区間では,L6リニアメントが東方延長の山地内で不明瞭になり,その北側に3条のリニアメントが判読される。

このうち,南側の2本のリニアメント(L7,L8)は, 山麓〜山地内に位置し,河谷尾根の右屈曲が発達している。右屈曲を示すL7リニアメントは,東方延長の山地で不明になることからCランクとし,またL8リニアメントも八倉層分布域に入ると不明瞭になって,東方へ追跡できないことから,Cランクと評価した。これに対して最も北側のL9リニアメントは, 北東方向へ八倉付近まで連続し,沖積面で不明になる。L9リニアメントに沿っては,LV面上の低崖,LU面の逆向きの傾斜が判読され,伊予断層の最近の活動は,L9リニアメント側へ移行しているように見える。

(伊予市八倉〜砥部町麻生)

伊予市八倉〜砥部町麻生にかけては,大きく湾曲するL9リニアメントがM面,LU面とLV面,沖積面との境界に判読される。リニアメントの南側では,LU面及びM面が山側へ逆傾斜している。L9リニアメントは,重信川および砥部川の沖積面で不明になる。L9リニアメントに沿って,LU,LV面に低崖が判読できる部分をBランク,地形面境界で撓みが認められる部分をCランクと評価した。

一方,山地内には,L10リニアメントおよびL11リニアメントが判読されるが, いずれも連続性に乏しく変位地形を伴わないことから,Dランクと評価した。