8−2−1 西部地区

西部地区では、リニアメントは主として、山地部と平地部の境界に認められる。

岩井・岩婦地区では、リニアメントが横断する平地部に変位地形は認められなかった。また、リニアメントを挟んだ低地側の基盤深度についても、特に沈降を示す状況は認められなかった。

平久里下地区では、変位地形と推定した段丘面のトレンチ調査の結果、活断層及び断層地質断層破砕帯は確認できなかった。また、ボーリング結果及び踏査によって、当初想定された基盤の三浦層群と保田層群境界にも、有意な落差は認められず、且つボーリングコア中に認められる広域テフラ(アカホヤ)層にも、変位は認められなかった。そのため、当初段丘面の高度不連続があるとした段丘面(U面)は、別の段丘面である可能性が高く、断層活動の証拠を認めることは出来なかった。一方、ボーリング結果では、基盤岩として軟質な破砕された泥岩と、比較的硬質な泥岩が認められ、基盤上面深度が深くなっているリニアメント北側には、軟質な泥岩が分布する。したがって、リニアメントは断層の活動の結果ではなく、岩質の硬軟による差別浸食によって生じた可能性が高いと考えられる。

以上より、西部地区で抽出されたリニアメントは、岩井地区では基盤岩の岩質の違い(三浦層群と保田層群)によって生じたものと考えられ、平久里下地区では、変位地形と考えられた部分は、実際には変位しておらず、リニアメントは岩質の違いによって生じたものと考えられる。したがって、西部地区において活断層の存在する可能性は低いと判断される。