7−3−4 竹ノ中地区(中部地区、平成12年度調査実施)

竹ノ中地区は、空中写真判読によって、4条の東西方向の延長を持つリニアメントが認められる。その内、東側へ連続するもっとも南側のリニアメントが一番長い延長を持つ。

全体的に急峻な地形を構成しており、ほかの地域と異なり、リニアメントを挟んで北側が低地となる特徴は見受けられない。また、段丘面は、小さな段丘面が4面程度認められる。これらの段丘面は、最も三原川に近い低位の段丘面を除き、いずれもリニアメントを挟むように分布し、リニアメントを横断して分布しない。また、南断層の他の地域では、リニアメント北側部分は地すべり地形が顕著に発達するが、本地区最南部のリニアメント近傍では、あまり発達しない。また、最南部のリニアメント北側には、三角末端面が認められ、最も南側の山地部にあるリニアメント上の、道路工事の露頭に、亀裂が発達し、鏡肌が顕著な基盤岩の断層露頭が確認された。その延長方向はほぼ東西であり、リニアメントの方向性と一致する。しかし、各亀裂は密着し固結しており、古いものである。

年代測定の結果、他の河川沿いの段丘面と対比して、河川の段丘面の形成年代が全体的に古いことがわかった。また、南側の主リニアメント北側に分布する、一番低位の段丘面も、6400年前の古い形成年代を示していることから、特にリニアメント北側が沈降している証拠は認められない。また、リニアメントを挟んだ南側の段丘面上では、ほとんど堆積物が残されておらず、河川の浸食力が強かったことが伺える。

地質断層については、露頭にて鏡肌等の発達した破砕された泥岩層が認められた。そのため一部はリニアメント=地質断層にあたると考えられる。しかし、14C年代値はリニアメントを挟んで基本的に高位面ほど古く、段丘面と年代値の関係に逆転などの異常は認められなかった。したがって現在の段丘面の形成については、岩質の違い及び河川争奪の結果を反映していると考えられる。なお、河川争奪が起こった年代は、各段丘面の年代値から、6400年前以降ではないかと推測されるが、不明確である。又、リニアメント南側で実施したオーガーボーリングでは、段丘堆積物が1m程度と大変薄いという結果が得られている。これは後述する高鶴地区と同様、段丘面が形成される時に浸食力が強かったことを反映していると考えられる。これは調査地区全体が隆起していたためであると考えられ、活断層の活動による変位地形等は認められなかった。

それらの結果から、竹ノ中地区の地形は、活断層の活動の結果ではなく、全体的な地盤隆起と河川争奪及び差別浸食によって形成されたのではないかと考えられる。

以上より、活断層が存在する証拠を確認することは出来なかった。

これらの結果から、竹ノ中地区の地形形成史の推定を行った。その結果、以下のようにまとめられる。

@ 13000〜8000年前

沼面よりも古い段丘面の形成が起こる(P1〜P3)。現在の地形ではかなり高い部分に残存している段丘面に対応すると考えられる。リニアメントを挟んで、三原川の上下流に分布する。

A 8000〜6400年前

沼T面相当(年代的に)段丘面の形成が起こる。この段丘面は年代的に沼T〜U面に対比されると考えられるが、調査地南側(下流)の三原川は地形が急峻であり、ダムが建設され、海岸側の沼面と厳密に対比するのは困難である。

B 6400年前以降

沼U面相当(年代的に)の段丘面の形成がおこった。

Aと同様の理由により、沼面と対比するのは難しい。この段丘面は、現在リニアメント北側でもっとも低い段丘面にあたる。他の河川では,1500年前程度を示す段丘面が、一番低位の段丘面の年代であり、三原川沿いには、新規には段丘面が形成されていないと考えられる。なお、これ以降に何らかの原因(大規模な地すべり等)で、河川争奪が起こったのではないかと推測される。