7−2−3 仲根・粟斗地区(東部地区)

打墨地区では、平成10年度調査において、リニアメント通過位置(鞍部)の基盤岩中に、破砕帯を伴う断層が確認されが、走向がリニアメントの延長方向とは斜行し、被覆層を変位させていない地質断層であった。

粟斗地区では、14Cによる段丘面の年代測定を実施し、粟斗U面(段丘面は上位からT〜Wの4つに区分)で7940±40年前という年代値が得られた。この段丘面はリニアメント延長上にあたるため、少なくとも7900年以降、活断層は活動してないこととなる。

仲根地区では、平成10年度調査(空中写真判読及び踏査)において、山地と平野部の境界にリニアメントが認められ、龍泉寺付近では、同一の段丘面と考えられる未区分の高位の段丘面を変位させ、直線的な低崖が認められた。

その結果を踏まえ、リニアメントの延長部が低地部を横断する龍泉寺西側の農道で、リニアメントを横断する南北方向に側線をとり、浅層反射法地震探査を実施し、さらに変位地形と推定した段丘面の低崖を挟んで、ボーリング調査を実施した。

浅層反射法地震探査の結果からは、ほぼリニアメントの延長部にあたる、ST127以北と以南で反射面の分布パターンが異なり(南側では、比較的反射パターンが明瞭であるのに対し、北側では、不明瞭となる)、基盤岩中には、高角度で北傾斜な構造が認められた。さらに初動の屈折トモグラフィーからは、低速度帯が認められた。そのため、この区間には基盤岩に断層破砕帯があるものと推定された。しかし、上位の第四紀層内部の構造については、明確には判別できなかった。

ボーリング調査で認められた未固結層(第四紀層)は、リニアメントを挟んで両側の地質が対比され、その産状は、低地側(南側)に向かい地層が緩く傾斜し、ほぼ連続して確認される。活断層によって変位した部分は認められない。またこの傾向は、基盤岩層及び上位の未固結層ともに同じである。

仲根地区では、今回の14C年代測定結果から、4100〜5500年前程度と新しいことが分かった。また、ボーリングで認められた上位の未固結層については、いずれも角礫状の泥岩礫が卓越しており、空中写真判読では、平坦面であったため段丘面と区分したが、岩相からは崖錐性の堆積物である可能性が大きく、段丘形成時又は、形成後に堆積した山地縁辺部の崖錐性堆積物を人工的に平坦化し、2面に分けた可能性が指摘される。14C年代測定の結果からも、未区分の平坦面は、平野部の段丘面の形成(花房面?)と同時期か、むしろ新しい時代に形成されたと考えられる。

また、これらの堆積物はその岩相から、浅い沼地もしくは後背湿地のような環境で堆積したものと考えられる。これらの細粒な堆積物が、山地の縁であり、元々傾斜していた基盤を埋めるような形で堆積したと考えられる。

以上から、仲根地区で段丘面を変位させている可能性があるとした箇所は、実際には段丘ではなく人工改変された可能性が高く、さらに変位地形ではないことが確認された。そのため、リニアメント延長部の基盤岩についても、変位していないと判断される。

粟斗地区の段丘面の年代からは少なくとも、7900年前を示す段丘面に変位は認められない。

以上より、鴨川地溝帯北断層では、活断層の活動した証拠は認められず、活断層が存在する可能性は低いと考えられる。