6−4 鴨川地溝帯南断層・平久里下地区

平久里下地区では、平成10年度調査で同一の段丘面と考えられる部分が、リニアメントによって変形しているものと考えられた。それによって、続いて平成11年度調査によって、変位地形を横断するように、トレンチ調査を行った。しかし、変位地形と考えられた部分は、実際には変位しておらず、泥岩部分にも段差や破砕帯等は認められなかった。そのため、リニアメントを挟んで同一と考えられる段丘面上で、ボーリング調査を実施した。その結果によれば、リニアメントを挟んで約2〜3m程度上流側が低いという落差が認められた。従って、活断層は当初想定したリニアメント通過位置よりもやや北側を通過するものと想定された。

それらをふまえ、昨年度行った調査に補足し、活断層の位置を確定するために、平成12年度調査でボーリング調査を実施した。

先行して、2孔の掘削を行った結果、HG−1及びHG−2で認められた泥岩層は、亀裂は発達し、一部細片状になっているものの、変質している様子は認められなかった。この岩相は、トレンチ調査で認められた基盤部分と同様の岩相であり、三浦層群相当層と判断される。一方、同一の段丘面上(U面)で実施したA、Cボーリングの基盤部分は、非常に破砕を受け変質が著しいため、明らかに今回のボーリング調査で得られた泥岩部分の岩相とは異なっており、保田層群相当層と判断される。

また、平成11年度調査のボーリング、トレンチ、切土露頭などの各結果からは、三浦層群中に活断層が通過している可能性は低いと考えられる。それらから判断すると、活断層が想定される部分は、今回行ったHG−1ボーリングよりも北側で、平成11年度に行ったNo.Cボーリングよりも南側の可能性が高いと判断される。しかし、No.CとHG−1はほぼ同一の段丘面と考えられるU面上に位置しており、両ボーリングの間には現在の地形に変形や段差等は認められない。

これらの結果を踏まえ、HG−2とNo.Cの間でさらに3孔のボーリングを実施した。

同一の畑地(段丘面)で実施したHG−3〜5、No.Cボーリングの4孔の内、HG−3、4については、基盤は三浦層群の泥岩であるのに対し、HG−5とNo.Cは保田層群の破砕を受けた泥岩が認められた。当初三浦層群の泥岩と、保田層群の泥岩層との間に断層が存在すると考え、保田層群と三浦層群との間に、相対的に南側の三浦層群側が高いギャップがあるものと想定した。しかし、今回の結果では、両者の間に顕著なギャップは認められず、逆に隆起側と考えられる三浦層群側がわずかながら下がっている傾向が認められた。また、基盤部分を覆う砂礫層も、南側のボーリングほど、やや深くなる傾向が認められた。砂礫層の上位には細粒層主体の粘土・シルト層が認められる。その粘土層中に広域テフラが認められた。これは鑑定の結果、アカホヤであることが確認された。このテフラ層はHG−4,5、No.Cで認められ、三浦層群と保田層群との境界部分においてもほぼ水平に堆積している。よって、少なくともこの部分は7300年前以降には、変位を受けていないと考えられる。なお、テフラ層は、北側のNo.AおよびHG−1〜3では確認することができなかった。また、左岸側で実施したNo.Bについても認められなかった。

以下にボーリング結果を簡潔に示す。