(2)左岸ピット(トレンチ)

左岸ピット(トレンチ)は、平成10年度調査の結果及び、右岸トレンチをふまえてV面相当にあたると考えられる部分と、U面との間で行った。

ピットの規模は南北約10m、東西約4m、深さ2.0〜4.0mの大きさで掘削を行った。

ピット壁面での地層は、その特徴から基盤及びA〜Eの6層に区分された。その結果を以下に簡潔に示す。

シルト岩(基盤) ピット底面に広く分布する。上位の砂礫層によってやや浸食を受けており、境界部は不陸が認められる。また、基盤上面の高さはW面トレンチ中央部を境に、北側が南側に比べて相対的に50cm程度高い傾向が認められる。しかし、基盤の上昇が認められる上位層部分も含め、断層は認められず、また亀裂等の発達する様子も認められない。

A 砂礫層 シルト岩礫を主体とするが、安山岩礫及び蛇紋岩礫等が混入する。礫径は10cm〜20cmと、かなり大きい。礫種から平久里川本流(嶺岡帯)起源の堆積層と考えられる。

B1 礫混じり砂層 礫はφ=5〜10oの円礫主体で、すべてがシルト岩より構成される。水平堆積構造が顕著である。礫種から、調査地北側を流れる平久里川支流(保田層群)起源の堆積物と考えられる。

B2 砂礫層。 φ=5〜50ミリのシルト岩の円礫を主として構成される。やや北側に傾斜した堆積構造を示す。

B3 砂礫腐植混じりシルト(E面にのみ存在) 礫はφ=5o程度。植物片(茎、葉、実)が密集し、水平堆積構造が認められる。

C 粘土 シルト岩の礫が全体的に散在する。礫はφ=5〜30o、角礫で、堆積構造は認められない。少量の腐植を全体に含む

D 礫混じりシルト。 φ=5〜20o程度の礫が散在する。構造は全く認められない。野や酸化し、淡茶〜褐色をなす。壁面では、層厚1.2m程度と、細粒層としては厚い(地すべり土塊起源で、何回かにわたって比較的短期に堆積した?)。

E 表土 灰〜暗灰。締まりが非常に悪い。

以上の岩相区分より、堆積層序順について推定を行った。

基盤部分が平久里川本流による浸食を受ける。その後、本流性のA層がこれを覆って堆積。支流によってA層が一部浸食を受ける。B層がB1〜B3の順次に整合的(一部非整合を含む)に堆積。C層が何回かにわたって比較的短期に堆積。D層もC層と同様に堆積する。その後E層が堆積する。

トレンチ壁面観察の結果、基盤の泥岩部分の上面の高さが、南側と比較して、北側がやや高いという傾向は認められたが、断層等の破砕帯は認められなかった。また、西側壁面には、未固結堆積部分にチャネル等による地層の削り込みが認められた。チャネルを埋積する堆積物は、傾斜したラミナを示すが、これは、堆積時に形成された構造であり、チャネルの下位の基盤には断層は認められず、亀裂も特に発達していない。そのため、左岸部に認められるリニアメント付近には、断層は認められないと考えられる。

図6−3−2−2−1 左岸トレンチ西面観察図

図6−3−2−2−2 左岸トレンチ西面観察図

図6−3−2−2−3 左岸トレンチ東面観察図

図6−3−2−2−4 左岸トレンチ東面観察図