(9)【北断層】仲根地区

・精査地点選定理由

北断層東地区でリニアメント沿いの地形面対比の中で、唯一、変位を受けていると考えられる面として解釈しやすい扇状地面、段丘面が形成されている地区である。

・概略

龍泉寺付近は、北側に急峻な山地が認められ、南側には加茂川によって形成された平坦面が分布している。加茂川は東流するが、精査地付近での河川の流下方向は、待崎川を含め、加茂川に合流する方向で、全体に南流する。段丘は大きく区分して5面に区分される。このほかに地形的特徴としては、崖錐堆積物や扇状地性の堆積物が作る地形が認められる。山地部の一部には、崩壊も認められる。

リニアメントは全体的には弱く、あまり明瞭でないが、北側の山地部と、南側の低地部との境界付近に北西〜南東方向で認められる。

・山地

全体的に急峻な地形を構成する。平地部との境界は明瞭で、沢が平地に流入する部分では、扇状地性堆積物が発達している。

地質は、露頭が少なく、龍泉寺付近には露岩がない。ただし、東側の西町付近では、約500m南流する沢の低地への流出部に泥岩(粗粒砂岩を挟む)露頭があるが、とくに破砕帯等は認められない。

・低地

精査地付近には、加茂川及び待崎川によって形成された段丘面、山地部から平地部へと流下する河川が形成した扇状地堆積物などが主体である。また、扇状地状に浸食が進んだ小丘も、山地部の縁端部に認められる。リニアメントを横断すると考えられる部分では、変位を受けている形跡は認められない。

段丘は大きく5面に区分でき、さらに上位に、未区分の面も山地部の縁部にわずかに認められる。以下に低位から順に述べる。

W面;

もっとも新期の面であり、待崎川に沿った部分で認められる。標高は9m〜12m程度である。リニアメントを横断すると思われる延長上で、面上に変位地形は認められない。既存の文献(仲川1977)を参照すると、同面は待崎面に対比される。

V面;

待崎川に沿って認められ、その標高は18m〜21m程度である。分布域は狭く、限られた部分にのみ認められる。既存の文献との対比では、同面は広場面に対比される。

U面;

待崎川に沿って認められ、標高20〜25m程度である。既存文献を参照すると、同面は小宮面に対比される。

T面;

待崎川沿いに認められるほか、精査地全般にわたって広く分布する。主に標高20m〜30mに分布する。ただし、和泉地区では、農地整理が進んでおり、細部の対比は困難である。また、龍泉寺付近では、T面上を薄い扇状地性の堆積物が覆っており、ほかの部分と比較して、やや傾斜していることがわかる。文献によると、同面は花房面に対比される。リニアメントを横断する部分では、農地整理が進んでいるため、変位を確認することはできない。

0面;

リニアメントよりも北側の山地に近い部分に、山地とほぼ平行に狭い段丘面が認められる。標高は30〜35m程度で、山地に近いため、崩壊性の堆積物によって、不陸の認められる部分も存在する。龍泉寺付近では、同面上に約1m程度の高度不連続が認められる。この区域では、いわゆる0面よりも高位の面が認められる。この高度不連続面は、断層の活動の結果生じた可能性が指摘される。一方、リニアメント沿いの部分では、地形改変が行われている可能性があり、それによって高度不連続が生じている可能性もある。

既存の文献では、この面について言及されていない。

・リニアメント

リニアメントは、山地部と平地部との境界に、北西〜南東方向に分布する。また、精査範囲よりも西側では、リニアメントは、平地と山地の境界から山地内部に認められる。しかし、全体的には、不明瞭である。以下西側よりリニアメントに沿って順に記述する。

待崎川を横断する部分では、いずれの段丘面にも変位は認めらず、リニアメントは不明である。

和泉集落西側には、標高60〜80mの分離丘陵が認められ、リニアメントは山地と分離丘陵との間を通ると推定されるが、ここでは顕著な高度不連続などは認められない。

和泉集落内においては、リニアメントの方向と調和的な高度不連続面が、崩壊性の堆積物上に認められる。

和泉集落東側の水田部分では、耕地整理が進んでいるために、地形異常は認められない。

龍泉寺周辺では、リニアメントを挟んで0面に高度不連続面が認められ、高さの差は約1m程度である。また、リニアメントに沿って、相対的に低地側には、池なども認められる(現在では、埋め立てられている)。

モウケ神社北側では、リニアメントは0面と南側低地との間に認められ、その高度差は約1m程度である。さらにここで流下する小河川は、右ずれのようにも見える。しかし、同河川が生成した新しい扇状地面には、高度不連続面は認められない。

モウケ神社東側300mの小谷では、山地と低地との間に扇状地面が形成されている。この扇状地面上にリニアメントが認められる。また、小谷はリニアメントを挟んで右ずれしているように見える。

モウケ神社東側約1000mの小谷でも、同様に山地部と低地部の境界部付近に、扇状地が認められる。この扇状地は、平地部への出口部分より西側に発達する傾向を示す。リニアメントはこの扇状地を横断するように認められ、高度不連続面の比高差は、0.5〜3m程度である。小谷は、リニアメントを挟んで右ずれしているようにみえる。また、扇状地がリニアメントを挟んで西側に偏って発達している理由としては、右ずれの活動を表している可能性がある。

東町地区においては、リニアメントははっきりと認められず、また、低地部にも顕著な高度不連続面も認められない。