(4)【南断層】古畑地区

・選定理由

空中写真判読によると、明瞭なリニアメントが比例の相対的低地部と、急峻な南側山地部との境界に形成されている。また、南側山体の直線崖によって切断された上流側が角張った盆地となっており逆に、直線崖を挟んだ南側山地部では、南流する先行河川(必従河川)が低地から山地へ向かって山地を著しく下刻する。これらの地形的特徴は、断層による相対的な垂直変位の結果であると考えた。

・概略

古畑地区は、地形的には南側の急峻な山地部と、北側の平坦部を主体とする部分に分けられ、両者の境界を東西にリニアメントが横断する。主な河川としては調査地中央を丸山川が南流し、大井橋付近、川崎橋付近においてそれぞれ小河川が合流する。

北側の平坦地では、5面程度の段丘面が認められる。もっとも新しい段丘面は丸山川に沿って分布している。南側の山地部では、それぞれの分布面積は小さいものの、7面の段丘が発達する。

北側の丘陵部では、浸食の進んだなだらかな地形を示しており、崩壊地及び地すべり地が発達する。

リニアメントは南側の山体と北側の丘陵との間に発達する鞍部及び沢地形に認められる。南側の山地部分と北側の平坦部との境界をほぼ東西に横断する。

・山地(リニアメント南側)

北側低地に面した東西方向の山体斜面には、急崖が形成されている。また、南側山地の中腹部には古い段丘面が点在している。川崎橋近傍では、リニアメントを挟んで、北側の平坦部と南側の山地部との比高差は、30m程度である。

川崎橋付近で、丸山川と合流するリニアメントに沿って東流する小河川では、連続露頭が観察される。ここでは第三紀の泥岩、細粒砂岩から構成され、これらの走向は、南北方向を示すものが多い。断層は、南北性のものは固結密着した古い破砕帯として、3m以上の幅をもって観察されるが、リニアメントに調和的な東西性の顕著な断層は山体部には認められない。

また、標高200m付近の山頂部付近に、平坦面が発達しており、段丘面であると推定されるが、今回、検討を行っている段丘面よりも明らかに標高が高く、更新世の段丘面であると考えられる。

・山地(リニアメント北側)

リニアメント北側の山地は、南側と対比して、浸食が進んでなだらかな地形を形成している。また、地すべり起源と思われる崖錐性の堆積物によってかなり斜面上に不陸が認められる。特に古畑地区では、大規模な地すべりが多く認められ、大きく見て西〜北西方向に崩壊する形態を示している。

・低地

現河川(丸山川)に沿って幅30〜40mで5段(リニアメント北側)、6段(リニアメント南側)の段丘面が認められる。段丘面は、水田として利用され、平坦である。これより河川から離れると、次第に比高を増し、耕地面としても1単位が狭小となるか(右岸側)、緩やかな起伏を成して旧放牧地として利用されている。この起伏は地すべりによる崩積土が、旧段丘面を覆ったためではないかと推定される。

河川から離れた起伏量の大きい傾斜地は、しばしば不規則な起伏を呈し、地すべり土塊または、崩壊性の堆積物より形成されている。

以下、低位から順に段丘面を説明する

北側

(X面)標高102m程度、川崎橋北側に分布し、もっとも新期の段丘面である。リニアメントを挟んで南側の6面と同程度の時代であると思われる。広域には沼V面に対比される。

(W面)標高108〜115m付近、大井橋南側〜上流部に向かってかなり広域に分布する。

(V面)大井橋東方、及び北方に分布し、標高115m程度である。

(U面)下久根東方、丸山川左岸の標高115m程度に分布する。分布範囲はわずかで、崖錐性の堆積物によって覆われてしまっているものと推定される。

(T面)U面と同様の地域に分布し、その標高は120m程度である。また、分布範囲も狭く、それは上記の理由によるためと推定される。

南側

(6面)川崎橋南側の丸山川に沿って分布しする。標高100m程度で、南側で最低位の段丘面である。広域には沼V面に対比される。

(5面)川崎橋北方の丘陵部縁辺に認められる。標高105m程度である。極狭い範囲のみに分布する。

(4面)川崎橋南方、丸山川左岸及び丸山川右岸に分布する。標高110m程度である。比較的広範囲に認められる。

(3面)川崎橋南方、丸山川左岸に分布する。極狭い範囲に分布し、標高110m程度である。

(2面)川崎橋南方の丸山川両岸に分布し、標高約115m程度で、かなり広い範囲に認められる。広域には沼U面に対比される。

(1面)川崎橋南方の丸山川右岸に主として分布する。標高は約120m程度で、広域には沼T面に対比される。

・リニアメント

リニアメントは、前述の通り、北側の平坦地主体部と、南側山地部との境界をほぼ東西に通過する。以下西側から順に説明する。

下久根集落西方約1.5kmの地点では、リニアメントの北側に低地が認められ、水田及び湿地となっている。これは、リニアメントを挟んで南側が隆起して、その結果できた地形である可能性が指摘される。

同集落西方約1km地点では、尾根に高度不連続が認められる。また、それよりも東側では、リニアメントに沿って沢が形成されている。

丸山川右岸のリニアメントは、南側の急峻な地形部分と比較的なだらかな崩壊地を形成する北側部分との境界に位置している。古畑南方の丸山川左岸では、地すべりが大規模に認められ、リニアメントは鞍部を横断する部分以外では、不明瞭となる。