(3)浅層反射法弾性波探査結果

各測線の浅層反射法弾性波探査の結果であるマイグレーション後の深度断面図を図2−2−15図2−2−16に示す。なお、深度断面図作成までの成果であるCDP重合速度プロファイル、マイグレーション速度プロファイル、時間断面図(マイグレーション前)、時間断面図(マイグレーション後)、深度断面図(マイグレーション前)、深度断面図(マイグレーション後)は資料編に付した。

(1) 深度断面図の特徴

深度断面図から読み取れる特徴を各測線毎に示す。

a No.1測線

・測線全体にほぼ水平な連続性の良い反射面が認められる。

・反射面の変化、ずれ等は認められない。

b No.2測線

・海側から距離程2,300m付近までは反射面が連続しているが、距離程 2,300m〜3,000m付近では明瞭な反射面が認められない。

・距離程0m〜2,300mの連続した反射面は、0m側(海岸側)に向かって傾斜している。

・傾斜角度は、深部ほど急であり変位の累積性が認められる。

(2) 深度断面図の地質解釈

a No.1測線

図2−2−17にNo.1測線周辺の既存ボーリングを深度断面(マイグレーション後)に投影した図及び既存ボーリング位置図を示す。

起点側では、測線の比較的近傍にボーリングが位置し、反射面の特徴と地質の分布が調和的であることから、地質解釈を行った。以下に地質解釈の根拠を示す。

深度約100m以浅:

既存ボーリングで礫、砂、粘土などが分布する範囲は、連続しない細かい反射面の分布する深度にほぼ相当する。陸成で岩相が側方で激しく変化する岡町層であると判断した。

深度約100〜200m:

既存ボーリングで軽石凝灰岩が分布する範囲は、間隔が比較的大きく明瞭な反射面の分布する深度にほぼ相当する。軽石凝灰岩が分布していることから八甲田T期火砕流堆積物(鶴ヶ坂凝灰岩部層)であると判断した。明瞭な反射面が複数認められることから、反射面が不明瞭となる塊状の軽石凝灰岩でなく、反射面となるような層相境界を含む複数の火砕流堆積物から構成されていることが考えられる。

深度約200m以深:

既存ボーリングで砂、粘土が分布する範囲は、間隔が狭くやや不明瞭だが連続した反射面が分布する深度にほぼ相当する。調査地周辺に広く分布し、海成でほぼ一様に堆積したと考えられる大釈迦層であると判断した。深度約400mに明瞭な反射面が認められ、大釈迦層は上部・下部に分割することが可能である。既存ボーリングでは上部が粗粒で下部が細粒(シルト質)となる境界付近に相当する。

以上の解釈及び反射面の連続を考慮し作成した地質解釈断面図を図2−2−18に示す。

この解釈断面図では深部に分布する大釈迦層に構造変化は認められない。このため、No.1測線に地質構造の変化は存在しないことが明らかになった。 しかし、距離2,000m〜2,500mを境とし、約200m以浅の反射面が起点側と終点側で異なる。これは、八甲田T期火砕流堆積物(鶴ヶ坂凝灰岩部層)がアバットしていることに伴い層相が変化することが要因であると推定される。一般的には不整合境界が存在すれば明瞭な反射面が存在することが多いが、供給地に固結度の低い砂岩(大釈迦層)が広く分布しているために明瞭な反射面の要因になる礫層が形成されなかったことが推定され、山地及びボーリングに八甲田T期火砕流堆積物(鶴ヶ坂凝灰岩部層)が分布しないことからアバットしていると判断した。

b No.2測線

図2−2−19にNo.2測線周辺の既存ボーリングを深度断面(マイグレーション後)に投影した図及び既存ボーリング位置図を示す。No.2測線近傍は既存ボーリングは無いが、周辺のボーリングでNo.1測線と同じ地質の分布が確認される。また、反射断面図の各地層の特徴は、No.1測線で見られる特徴と類似している。このため、地質解釈はNo.1測線と同じ根拠で行った。 No.1測線と同様に反射面の連続を考慮し作成した地質解釈断面図を図2−2−20に示す。

地質解釈断面図で読みとれる特徴を各地質ごとに以下に示す。

大釈迦層

・距離約700〜2,300mでほぼ一定傾斜(3〜4゚)で起点側(海側)に傾斜する。

・『[新編]日本の活断層』でリニアメントが示されている付近(距離2,300m付近)から終点側(山側)で反射面の連続が急激に悪くなる。

→地表の露頭で観察される急傾斜構造が地下深部まで連続すると判断でき、地質構造が大きく変化することがほぼ明らかになった。

・距離700mから起点側(海側)では反射面の傾斜が急になり、深部で傾斜が急になると読みとれる。

→撓曲変形が推定される。

八甲田T期火砕流堆積物(鶴ヶ坂凝灰岩部層)

・距離約700〜2,300mでほぼ一定傾斜(3〜4゚)で起点側(海側)に傾斜する。

・距離約2,300m付近から終点側(山側)の連続は不明瞭であるが、深度100m以浅の反射面の間隔が大きくなること及び南側の飛鳥沢で地形変換点の西側に露頭が確認されることからアバットしている可能性が高い。火砕流堆積物がアバットするときに地形の影響を受けている可能性が高く、変形は不明である。

・距離700mから起点側(海側)では反射面の傾斜が急になる。

→撓曲変形が推定される。

岡町層

・岡町層は陸成層で側方の層相変化が激しく、チャネルによる下方浸食なども考えられる。このため、このスケールの探査で変形を考えることは難しい。

以上からNO.2測線では以下のことが明らかになった。

・距離約700mから起点側が撓曲構造の頭部である可能性が高い。変形は八甲田T期火砕流堆積物(鶴ヶ坂凝灰岩部層)までは明らかで、岡町層以降は不明である。この構造は、海岸線付近または東側の海域を境界とする活構造である可能性がある。さらに明らかにするには海域での探査及びボーリングなどの調査が考えられる。

・距離約2,300mで地質構造の変化が認められ、断層である可能性が高い。

変形は大釈迦層まで明かで、八甲田T期火砕流堆積物(鶴ヶ坂凝灰岩部層)以降は不明である。これが青森湾西断層の実体であると判断される。