(5)トレンチ調査位置の選定及び予備調査の概要

津軽山地西縁断層帯は幅1km以上にわたる撓曲構造であるためトレンチ調査の実施がきわめて難しく、最新活動時期の判定がほとんど不可能である。従って、地形解析及び浅層反射法弾性波探査から考えて、地層が断層によって切れている(あるいは撓曲の幅が狭い)と考えられる大平断層を対象としてトレンチ調査を実施した。

下石川地区の谷底低地及びその周辺の地形区分図を図2−3−13に、谷底面に認められる遷急線の位置及び予備調査の位置を図2−3−19に示す。

下石川地区の微地形区分では、熊野宮北東側は下石川の谷底低地の中でも最も低い面(PW面:沢沿い)が分布しており、五所川原市前田野目付近では谷底低地の面(PU面:水田)との比高差は3mである。しかし、下流になるにしたがって比高差は少なくなり、リニアメントのすぐ近傍である熊野宮のある段丘面のすぐ北東側で、二つの面の比高差がほとんどなくなっているのが認められる。これは断層の活動によって、今まで段丘面を切り込むようにして流れていた沢が堰き止められてPW面を形成していた沢がPU面上にまであふれ出たのではないか、と考えられる。ここで変位・変形を受けていないもっとも新しい堆積物の年代を決定すれば、PW面堆積物の締まり具合やPW面が地形としてもっとも低地であるという状況から、最新活動時期を決定できる可能性が高い。

また、下石川地区の谷底平地は、微地形区分では断層の通過すると思われる部分で段差地形は認められない。しかし地形測量によると圃場整備をされた後ではあるが極めて微妙な地形の遷急線が認められた。また、先行して行ったB3−4孔でも農耕土の下に腐植土の存在が確認され、これが断層の活動によって生じた沼沢地の堆積物である可能性がある。ここも熊野宮北東側と同様に、ここでも断層が活動して河川をせき止めて沼沢地ができたと考えられることから、最新活動時期を決定できる可能性が高い。

トレンチ調査の位置選定にあたり、上記の微地形区分結果に加え、浅掘りボーリング調査、極浅層反射層反射法弾性波探査及び電気探査を実施してその結果をまとめ、トレンチの掘削にもっとも適当な箇所を選定することとした。トレンチは2箇所計画し、予備調査の地域は熊野宮の北東側をA測線とし、予備調査としてボーリング調査(B7〜B13)、極浅層反射法弾性波探査(延長80m)、電気探査(延長80m)を実施した。また、下石川の谷底平野の中央付近をB測線とし、予備調査としてボーリング調査(B1〜B6)、極浅層反射法弾性波探査(延長156m)、電気探査(延長105m)を実施した。また、予備調査後トレンチ予定地付近で壷掘りまたは溝掘りを行い、変状が確認できたところをトレンチとして整形することにした。