1−2−5 本調査での調査結果のまとめ

前述の調査結果をまとめると、以下のようになる。

・馬淵川沿いの五日市面は、撓曲の東翼で東へ向かって緩く傾斜しているのが確認されたが、測量点の位置を検証すると、この傾斜は折爪断層の活動による変位を現していない可能性が高い。

・浅水川沿いの三本木面及び尻内面1は、撓曲の両側で約2.2mの比高差が認められた。

・五戸川沿いの三本木面は、撓曲を横断する範囲では面の保存が悪く、期待する成果が得られないと考えられたため、測量は実施しなかった。

これらの結果について以下に考察する。

五日市面(約2万5千〜3万3千年前)の変位については、本年度調査では確実な結果は得られなかった。平成8年度調査では、国土地理院発行の2万5千分の1地形図(等高線間隔10m)に基づく地形解析の結果、傾斜が1°の地形における±3m程度の精度(西村(1971))での有意な変位は認められなかった。平均変位速度が0.11〜0.15m/千年であることから、五日市面の形成以降の経過時間を考えると、単位変位量は約3〜5mとなる。本調査による青森県内の折爪断層の分布は約21kmであり、活断層研究会(編)(1991)の活断層分布図による岩手県内の折爪断層の分布は約29kmであることから、折爪断層の分布を約50kmとすると、松田式による単位変位量は約4.2mであり、平均変位速度から推測した単位変位量と矛盾しない。

浅水川沿いの三本木面(約1万3千年前)に認められた段丘面の比高差は約2mであり、上述のように折爪断層の単位変位量が3〜5mであることから、この比高差は折爪断層の変位ではない可能性が高い。したがって、三本木面形成以降の折爪断層の活動はないものと考えられる。浅水川沿いの撓曲を横断する部分は、地形的に河谷の狭窄部にあたるため、上流側と下流側で面の標高が異なっているということも考えられる。

以上のことから、五日市面形成時以降の段丘面には、折爪断層による変位は認められない。したがって、最新活動時期は約2万5千〜3万3千年前以前であると考えられる。折爪断層は最新活動時期から約2万5千〜3万3千年以上経過していると推定されることから、近い将来に活動する可能性はあるが、活動周期が数万年と非常に長いため、今後数百年以内に活動する確率は数千年間隔で活動している断層に比べて低い。