(4)褶曲

a.背斜

背斜は調査地域の地質構造を大きく支配しており、その背斜軸は名川町南部の青森・岩手県境付近から北へ、名久井岳、馬淵川中流北岸の南部町玉掛を経て、浅水川中流の五戸町手倉橋東方、五戸川中流北岸の倉石村山田付近に至るNNW−SSE方向に追跡される。背斜構造は中新統門ノ沢層、末ノ松山層、留崎層、舌崎層、久保層及び鮮新統斗川層を変形させ、馬淵川以南の名久井岳付近では変形量も大きく明瞭であるが、以北では次第に小さく緩やかになり、五戸川と北の後藤川間の丘陵で消滅する。

このように、背斜構造は南ほど変形量が大きく、北へプランジしていることからみて、南ほど相対的な隆起量も大きい。また、走向線図に示すように、両翼部の傾斜が10゚〜20゚前後の非常に緩やかな褶曲であるが、その東翼部が南部の名久井岳東麓では断層及び撓曲により、北部の馬淵川から五戸川にかけては撓曲により変形を受け、全体的には東西非対称的な背斜構造となっている。

b.向斜

名久井岳東麓から青森・岩手県境にかけて、前記背斜構造の東翼をなして分布する中新統末ノ松山層高屋敷粗粒砂岩部層中には、N−SないしNNW−SSE方向の短い背斜・向斜軸が見られるが、構造を大きく支配するものではない。一方、高屋敷粗粒砂岩部層を不整合に覆う鮮新統斗川層相当層にも、概ねNNW−SSE方向の傾斜10゚前後の緩い向斜構造が認められる。向斜軸は名川町官代付近で雁行ないしうねっているようにも見えるが、同付近にはNNE−SSW方向の断層があって(後述)、これによって右ずれ変位している可能性がある。