(3)変位地形に起因するリニアメント

Wf面は主に入内川左岸に沿って狭長に分布する扇状地性の平坦面で、Vm面形成以降の低海水準期に形成されたと考えられていることから、通常は沖積面に埋積され扇状形を残して緩やかに没することが想定される。しかしながら、Wf面は扇状地面の通常の初成傾斜より大きく全般に5゚を超えて東に傾斜し、平野に面する東端の多くは扇状形を示さず、沖積面からの比高数mの崖を形成し、しかも、小さな出入りはあるものの、ほぼN−S方向・直線状に断続している。Wf面を刻む谷の多くは沖積面への出口で扇状地を伴わず、その谷底は切られているようにみえるものもある。また、細越付近のWf面中に残存するVm面の傾斜は東に約8゚とWf面より大きく、傾動しているようにみえる。

このように通常の扇状地性の堆積面にはみられない地形上の特異性から、Wf面の東への傾斜及び同面東端のほぼN−S方向で直線状に断続する比高数mの崖地形は海進時の波食あるいは入内川の侵食のみにより形成されたとは考え難く、基本的に断層運動による傾動及び変位地形(断層崖あるいは撓曲崖)により入内側川の流路が直線的に規制され、断層崖あるいは撓曲崖が侵食され形成されたと考えられる。

したがって、入内川左岸の直線状に断続するWf面東端は変位地形に起因するリニアメントとして判読され、入内南方から北へ ほぼN−S方向に7号線バイパス付近までの約12kmにわたって追跡される。特に入内集落の北約800m地点から北へ細越にかけての約7kmは崖地形とその直線性が比較的明瞭である。

Wf面の変位量は、東側のWf面が確相対的に沈降変位し、沖積面下に没していると推定され、その面が確認されないため不明である。