4−3 総合評価

「北由利断層に関する調査」3カ年の調査の結果に基づいて,北由利断層も総合評価をおこなった。評価の要約を以下に示す。

(1)構造の特徴:伏在撓曲断層

(厚い堆積層に覆われているため、明瞭な断層構造が地表(海底面)には表れず「撓曲構造」として表れている。また、地表(海底面)に明瞭な変位地形(段差)は表れていない。)

   

(2)断層の長さ:KY−3断層が約10km,KY−2断層が約15km。両断層の間の不鮮明な区間を含めると約30kmに達する。

(3)平均変位速度(鉛直成分):0.5〜1.0m/1000年(平均0.65m/1000年)程度。

活動度B級の活断層。

(4)最新活動時期:2400年前以降の可能性がある。

(5)活動間隔:10500年前前後に活動した可能性が高く,それ以降3回程度活動した可能性がある。最新活動時期(2400年前以降)より、活動間隔は、2700年〜3500年程度の可能性がある。

(6)単位変位量:1回あたりの変位量は平均2m程度の可能性がある。

(7)想定地震規模:松田の式(logL=0.6M−2.9)によると、想定地震規模は以下のように求められる。

@ 長さ10kmの場合:M 6.5

A 長さ30kmの場合:M 7.3

(単位変位量から推定の場合: logD=0.6M−4.0,D=2mの場合 M=7.2となる)。

図4−6.E−300断面の地質解釈

この図面は、T面以上はチャ−プ、それ以深はブーマーの音波探査断面から主な反射面を抽出するとともに、主な反射面に挟まれた地層内の反射面(内部反射面)も表現した図をベースとし、ボーリング調査にもとづく地層区分を重ねて表したものである。この断面図から、以下のことが読み取れる。

【内部反射の特徴】a4層以上の地層、b層、b´層はほぼ水平な反射面が卓越するが、a層最下部のa5層は陸側に傾斜する斜交層理状の反射構造が顕著である。

【不整合】撓曲部において、b層内部の反射面がX面(b層とa5層の間)に対し、傾斜不整合的に接しているようすが認められる。

【撓曲部での層厚変化】a5層は、上盤側で若干厚くなる傾向が認められるが、上位のa4層と併せた(すなわちX面からV面間の)層厚はほとんど変化していない。これに対し、U面とV面に挟まれたa3層、T面とU面に挟まれたa2層については上盤側に向かって薄くなる傾向が認められる。0面とT面に挟まれたa1層は、層厚の変化は余りみられないものの、撓曲部での傾斜は明瞭に認められる。

【小断層】撓曲部の下盤付近においてa4層〜b層を切る断層が認められる。この断層は、上下変位量が0.5m程度であり、上・下方には連続しないことから、W面形成以降の断層活動時に副次的に形成された可能性がある。