8−1−2 陸域の隆起速度

4.5項の地形面区分より、調査地域には中位段丘や完新世段丘が分布することが明らかになり、段丘認定作業における信頼度はTb〜Vbに分類される(表8−1)。この完新世段丘はいずれも淡水成である。

一方、中位段丘は雄物川、子吉川の中位段丘が海成段丘と言われ、調査地域ではさらに海側に近いこと、および衣川などの中位段丘の分布が概ね同標高であることなどから海成段丘と考えられる。

陸域海岸部の隆起速度の算定にあたっては原則的に段丘認定作業における信頼度Va以上のものとし、10年当たりの最近の隆起速度は完新世段丘の各々の14C年代を用いた。なお、完新世段丘は海成面プロパーではなく、現河床からの比高で算出したものであり、真の隆起速度を示していないので参考値として扱うことにする。

一方、中位段丘は小池ほか編(2001)の「日本の海成段丘アトラス」に従い、5eの海水準高度を+5m、5cと5aを−15mとし、生成年代は5e、5c、5aの各々を12.5万年、10万年、8万年とした。

これらの結果は表8−1に示すとおりである。中位段丘の隆起速度は測定数が少ないので判断が難しいが、雄物川や子吉川の流域とほぼ同等といえる。また、完新世段丘の隆起速度も0.5〜0.6m≧/10年と、雄物川や子吉川流域と概ね同等である (図8−1)。一方、中位段丘から完新世段丘への隆起速度の変化については、完新世で隆起速度が大きくなったとみるよりも、有意の差として読み取りができないとみるのが妥当であろう。

由利丘陵内の完新世段丘の隆起速度についてみると、調査地域北側の雪川、鮎川ではやや小さくなり、信頼度Vbではあるが試算すると境川ではさらに小さくなる。このような傾向は調査地域の南側で海岸に山地が迫り、また、海岸の露岩が南半部に多いこととも整合する。また、北側で隆起速度が小さくなることは、核燃料サイクル開発機構(1999)による秋田平野の沈降が40〜20万年前以降1.0〜1.3m/10年、現在および後氷期の沈降が0mm/年とする傾向とも整合的である。