7−5−2 沿岸海域の断層

沿岸海域の断層(表7−4)

広域かつ深部にわたる構造解釈を行った結果、陸域で確認されている北由利断層(海岸線から1km弱の距離でほぼ海岸線に平行)の沿岸海域での形態、その深部構造等に関して以下の点が明らかとなった。

(なお、図7−37における断層位置は図7−35の解釈断面図で断層を想定延長した海底面位置で示している。解釈図において断層変位が認定できる場合は破線で、撓曲構造の場合は点線で示した。断層の変位量は断層傾斜角が解釈断面図で明確に判定できないため垂直変位量のみとし、これを仮に現在までの年数で試算し、103年当たりの平均変位量を求めた(表7−4)。断層の長さは測線間隔が粗いため精度は低いが概略の数値として求めた。一測線のみで解釈した断層は5km以上として表示した。)

(1) G層下限(No.2 G.inf.)はRSA892、RSA894LM、RSA883LM、RSA885で不整合面として解釈でき、同層は調査地域全体で追跡できる。

(2) 海岸線付近から陸域側では、断面図の反射記録から地質構造を解釈するのが困難であった。これは陸側の新第三紀層が褶曲して高角度傾斜を成すためと考えられる。このため、この部分に文献より北由利断層(KY−1)を転記した。なお、陸域への長大測線でも断面図の反射波の特徴のみから層序を追跡するのは困難であった。

(3) 調査地域南部の測線(例えばRSA883LM,RSA884LM)では、海岸線付近の海側に東傾斜のやや高角な断層(KY−2)が解釈できる。この断層は分布位置、形態から見て北由利断層の一部であり、G層下限も切っている。

なお、KY−2の延長上で、2測線隔ててRSA895測線に逆断層(KY−2’)が分布する。この断層はE、F層を切るが、G層は切らず、その背斜構造に関与していると考えられる。

(4) KY−3(3’、3”は延長上で断続する断層)、KY−4、KY−5は近傍の背斜構造を撓曲構造と見て東傾斜の逆断層を解釈したものである。KY−3、4断層はKY(W)−1、2断層の下位に分布し、浅層部における位置等が不明である。また、KY−3”断層はD層堆積以降、KY−5断層はH層堆積以降の活動は認められない。

(5) 海岸線から沖合い5km程度までの海陸境界域には西傾斜の断層面(KY(W)−1〜3)が解釈できる。これらはG層下限に変形(撓曲)を与えているが大きな落差を生じる断層では無いと解釈できる。なお、大局的には東側が高く西側が低いので、さらに下位には東傾斜の逆断層が存在すると考えられる。

(6) RSA894LMでは、秋田沖北部SI−1(試錐)と土崎沖SK−1(試錐)の地層の対比から、西側傾斜の逆断層(KY(W)−2)が存在すると考えられる。

(7) 海域での西傾斜低角断層面(KY(W)−2)とその活動の程度をG層下限の変形(撓曲)の度合いで見ると、北側の測線RSA892,893に比べRSA894LMでの構造運動がより活発である事が解釈できる。

(8) その南側の測線(RSA895,896)では、G層下限の変形(撓曲)の度合いも小さく、解釈した西傾斜断層面(KY(W)−1)は、かなり高角である。

(9) 更にその南の測線(RSA881LM)では、再び西傾斜の低角な断層面(KY(W)−2、3)が解釈できる。

(10) 調査地域南半部の測線(RSA884LM,885LM等)では、西傾斜低角断層は断面図上には明確ではない。

(11) 調査地域内で最南端の測線(RSA886)における西端付近の急傾斜構造は、この測線以外では認められない。