6−3−1 能代断層隆起側の上昇速度と逆向き断層の鉛直方向の変位速度

1/5,000国土基本図に図示された標高点の分布から得られる中位段丘の古海面高度から能代断層隆起側の上昇速度を推定した。また、逆向き断層の変位速度についても併せて検討した。

表6−3−2に能代断層隆起側に分布する中位段丘面の古海面高度と逆向き断層の変位量の読み取り結果を示す。また、読み取りから得られる上昇速度と逆向き断層の変位速度を図6−3−1に示す。

なお、変位基準の形成年代は以下のように設定した。

中位段丘1面:       13.0万年

中位段丘2面:       12.5万年

中位段丘3面および古期砂丘:10.5万年

中位段丘4面:        8.0万年

沖積段丘1面:        0.7万年

洞爺テフラ :       11.0万年

阿蘇4テフラ:        9.0万年

また、最終間氷期の古海面高度は以下のように仮定した。

同位体ステージ5a(下末吉期): 現海水準+0〜5m

同位体ステージ5c:      現海水準−10〜−25m

縄文海進最大海進期:     現海水準+4m

能代断層の隆起側地塊の上昇速度は0.2〜0.5m/1,000年の範囲に示される。外岡付近の潟湖成面をほぼ海水準とすると、地形面の形成時期を同位体ステージ5aとみるか5cとみるかによって上昇速度が大きく異なる。定量的な議論を行うためには地形面の形成年代を再検討する必要がある。

八郎潟北岸地区の汀線高度の検討から、能代断層隆起側は傾動と撓曲を伴っていると推定される。そのため古海面高度を測定した位置によって隆起速度が異なる。最大隆起部の上昇速度を示すとみられる東雲地区中位段丘3面や、八郎潟北岸地区に分布する最高位沖積面の汀線高度の上昇速度を採用すると、概ね0.5m/1,000年が妥当と判断される。

逆向き断層群の変位速度は、逆川断層のように複数の断層崖が併走する場合、断層の鉛直変位の累計を図示した。小手萩断層には小規模の背斜軸が併走しているため、これらを加算すると図に示したよりやや大きな値をとる。しかし、いずれにしても逆向き断層群の鉛直方向の変位速度は0.2m/1,000年を上限としている。