6−1−4 古期砂丘(MD)

成合地区に分布する古期砂丘の構成層からは、様々な広域テフラが得られている。成合地区の海成砂層と砂丘砂は、逆川断層B付近では20〜30mの厚さを持っている。砂層の底部から5〜10mにToyaが分布し、その上位10〜20mにAso−4が位置している。Aso−4の上位にはやや褐色を帯びた砂層が4m程度載ることがある。一方、Aso−4の下位4〜6mには泥炭層を挟在することがあり、大沢他(1985)は泥炭層を砂丘間低地の堆積物と推定している。野村他(2000)は、泥炭層から給源として御岳火山が推定される逆川テフラ(ST)を、また泥炭層の直下に三瓶−木次テフラ(SK)を記載している。

古期砂丘の離水時期については、海成砂層と砂丘砂の境界をどの位置にとるかが問題となる。大沢他(1985)は、砂丘砂の基底部付近にToyaが位置することから下末吉面相当の潟西段丘の上位に一部軽微な不整合を伴って砂丘砂が堆積したとしている。 しかし、一部の露頭ではToyaの上位の砂層に生痕化石が認められ、泥炭層付近の砂層に浅海に自生する海緑石が含まれていることがある。これらの事実を考え合わせると、同位体ステージ5eの海進期を過ぎて一度離水したものの、砂丘間低地など比較的標高の低い部分は同位体ステージ5cの海進期に再び海面下に置かれたことが想定される。この想定は、外岡付近の潟湖成層が同位体ステージ5eの海成面を覆うという想定と調和的である。

一般に断層変位の基準となる地形面の形成年代には離水年代が充てられる。その場合、離水以降堆積したロームや黒土などの風成層が地形面に対して薄く均一に分布していることを想定している。しかし、風成堆積物が砂丘砂の場合、多量の飛砂が断層沈降側や砂丘間低地に選択的に堆積することが予想されるため、砂丘の形成期を変位基準とする必要がある。

成合地区の古砂丘堆積物は、その大半がToyaとAso−4の間の層準に分布している。また、逆川断層BではAso−4の変位量と地形面の変位量がほぼ一致している。すなわち、古期砂丘の主要な成長期が同位体ステージ5cの海進期であったことを示している。このことから変位基準年代を同位体ステージ5cとする。

図6−1−1 中位段丘構成層とテフラの関係

図6−1−2 地形面の大略の高度分布と構成層の堆積環境