(1)新第三系および前〜中期更新統

@ 女川層:三種川流域の森岳断層隆起側および和田付近の背斜軸部に分布する。硬質泥岩を主体とし、酸性凝灰岩を挟む。和田付近には本層上部のいわゆる「硬軟互層」を示す部分が認められる(巻末資料2のCY−15)。本層は男鹿半島南岸の女川を模式地とする。しかし、女川層の層相は外洋性の堆積相を示すものであり、男鹿半島は1,290〜580万年前の長期間にわたって外洋性の環境に置かれていたと考えられている。

A 船川層および上部七座凝灰岩部層:調査地北部の水沢川流域付近、南部三種川流域の森岳断層隆起側、および和田〜外岡付近の背斜軸部に分布する。塊状無層理の暗灰色泥岩からなり酸性火砕岩を伴う。本年度反射法探査測線(浅内沼測線)の東方では、本層最上部の七座凝灰岩部層の露出が認められる(巻末図版1、P2)。本層も男鹿半島の船川を模式地とする。しかし、船川層の層相は沈降した還元的環境を示し、男鹿半島ではより長期間にわたって外洋の環境に置かれていたと考えられている。

B 素波里安山岩:調査地内では船川層と同時異相関係にあり、調査地北部の水沢川流域付近に分布する。安山岩溶岩および同質火砕岩からなる。

C 天徳寺層(酸性凝灰岩および砂質凝灰岩を含む):調査地北部の畑谷地区と南部の米代川以南に広く分布する。シルト岩を主体とし、砂岩、酸性凝灰岩、および砂質凝灰岩を挟在する。本年度反射法探査測線(浅内沼測線)の東端部にも露出し、川尻向斜東翼において西へ傾斜しているのが観察される(巻末図版1、P1)。天徳寺層は秋田市天徳寺付近を模式地とする。軟体動物化石を多産し、浅海の環境に移行したことを示している。秋田付近での天徳寺層堆積期に、能代断層沈降側に相当する男鹿半島は引き続き外洋の環境に置かれていたと考えられている。

D 笹岡層:調査地北部では畑谷地区から東雲地区にかけて分布し、南部では中沢向斜を取り巻く分布を示す。砂岩を主体とし、シルト岩、礫岩、酸性凝灰岩、および砂質凝灰岩を挟在する。笹岡層は秋田市の笹岡付近を模式地とする。「大桑−万願寺動物化石群」とされる軟体動物化石を多産し、浅海の環境を示す。

E 中沢層:米代川北岸の築法師付近から南岸の中沢地区にかけて中沢向斜の軸部に分布する。固結度の低い砂岩を主体とし、酸性凝灰岩、シルト岩、および礫岩を伴う。本層下部には笹岡層に類似した海生の貝化石群集を伴うが、中〜上部は潟〜湖沼性の堆積物となり、浅海から湖沼的な環境に移行したことを示している。