(1)隆起側における沖積面の離水年代

隆起側の沖積段丘が能代断層の変位によって離水されたものであれば、離水年代は断層変位時期に対応する。沖積段丘の形成時期に関して得られた14C年代値を図3−4−5に示す。

@ 隆起側A1面の腐植土底部の試料からは、5,990〜6.230cal.yBPの年代値が得られ、米代川南岸および浅内沼測線沈降側のA1面と同じ離水年代を示す。

A A2面の腐植土底部の試料は、500cal.yBP前後の年代を示すことが多い。この年代はA2面構成砂層に進入したとみられる層状の植物や、A3面の砂層上部の腐植質部、および沈降側B−5孔の腐植土底部にも認められ、A2面だけでなく、これよりやや広い地域に集中して認められる。このことから500cal.yBP前後の年代が単純にA2面の離水年代を反映しているとは考えにくく、特異な植生などを考慮する必要もある。

B A3面の腐植土底部や砂層上面の腐植質部は、1950AD以降の年代(modern)を示すことが多い。B−74を含めてこれより南側に位置する3孔は耕作土・腐植土層の底部が現海水準より低く、離水していない可能性がある。またA3面は離水年代が若く、腐植土層の形成が不十分であり、水田の改変等も加わって正確な年代把握が困難となっているとみられる。

図3−4−5 八郎潟北岸地区離水年代検討図