(3)能代断層の活動性の推定に関する留意点

米代川における能代断層の平均変位速度は、十和田−八戸テフラの変位量から0.85〜1.00m/1,000年と推定された。また後述するように、八郎潟北岸での平均速度は0.25〜0.50m/1,000yと推定される。浅内沼測線が米代川と八郎潟北岸のほぼ中間に位置し、調査測線間の距離が4〜5km程度であることを考慮すると、浅内沼測線の平均変位速度が過大に評価されている可能性がある。

図3−3−1の浅内沼測線の断面では、同位体ステージ5に相当する堆積物の厚さが、隆起側で35m程度、沈降側で15m程度になっており、断層変位の累積性を考慮すると沈降側が非常に薄い。隆起側に堆積速度の大きな砂丘砂が分布するとは言え、8万年前〜12.5万年前に相当する最終間氷期の堆積物の厚さが、沈降側で僅か15m程度であるとは考えにくい。一方同位体ステージ3〜4に相当する堆積物は、3地域を通じて浅内沼測線の沈降側にのみ分布し、その少なくとも下半部には厚さ5〜10mの礫層を2層伴う扇状地等の陸成層と推定される。この厚い陸生堆積物を供給する河川としては米代川が有力である。同位体ステージ3〜4の海面が、現海水準から50m〜80m程度低かったことを考慮すると、浅内沼測線では米代川が同位体ステージ5に相当する堆積物を大きく削剥し、その上に広い扇状地を形成していた可能性が指摘される。

すなわち浅内沼測線の沈降側では、同位体ステージ5相当の堆積物の上部が失われているため、変位速度が過大に評価されている可能性が指摘される。

図3−3−1 浅内沼測線地区 地質断面図

図3−3−2 浅内沼測線地区 微化石分析結果