(2)浅内沼測線地区

浅内沼測線の沈降側では、平成12年度の弾性波探査の解釈断面図において、沈降側の構造がほぼ水平になっているとみなされる位置にB−6孔を配置し、本年度再解析を行なった弾性波探査の南北測線との交点にB−8孔を配置した。隆起側では、逆向き断層群の影響を避け、浅内地域の古期砂丘の最高標高部にB−7孔、さらに古期砂丘の背後にB−9孔を配置した。また3地区の沖積1面の関連性を把握するため、八郎潟北岸と浅内沼測線の間にG−1、G−2、G−3孔、米代川と浅内沼測線の間にG−9孔、G−10孔、G−11孔を配置した。

浅内沼測線地区の簡易柱状図を図2−2−9および図2−2−10に示し、その特徴を以下に述べる。なお詳細な観察記事は巻末の観察記録集に示す。

沈降側のボーリング試料

B−6孔の深度7m付近、B−8孔の深度9m付近までの区間に生痕化石、腐植物、および十和田−八戸テフラに由来する漂流軽石を含んだシルト質堆積物(沖積層)が分布する。

沖積層の下位には、特徴的な白色ないし淡橙色の色調を持った塊状粘土層(B−6孔では沖積層の底部にパッチ状に散在)を挟んで、一部に生痕、平行葉理、および細礫の並びを伴った砂質の堆積物がB−6孔の深度36m付近、B−8孔の深度28m付近まで連続する。更に下位は、B−6孔の深度72m付近、B−8孔の深度54m付近まで、炭質物に富んだシルト層と礫層が繰り返し分布する。シルト層には厚さ最大1m程度の泥炭層、材化石を特徴的に含む層準が認められる。礫層は厚さ5〜10mに達する2層準が追跡される。

B−6孔の深度102m付近、B−8孔の深度77m付近に細礫層があり、その直下に白色の漂流軽石を含む特徴的な層準が認められる。上位のシルト層と細礫層の間は、全体として上方粗粒化を示す区間であり、その下半部には生痕や貝殻片を伴った海成環境を示唆する細粒の堆積物を主体とする。B−6孔では、細礫層の下位から孔底(深度138m)まで、所々に貝殻片や生痕を伴う極細粒砂ないしシルトを主体とした細粒の堆積物が連続し、大きく3回の上方細粒化サイクルを形成する。深度約129m以深のサイクルでは、固結度が上昇する。

隆起側のボーリング試料

B−7孔の深度19m付近、B−9孔の深度11m付近まで、総じて塊状無層理の細〜中粒砂を主体とする古期砂丘堆積物が分布する。B−7孔では途中深度14.5m付近に洞爺テフラ(Toya:降下年代110〜115ka,同位体ステージ5d)を挟在する。B−7孔の深度19〜21m付近、B−9孔の深度11〜13m付近には厚さ2m前後のシルト層が追跡される。シルト層の下位は、深度32m付近、B−9孔の深度26m付近で固結したシルト岩に到達するまで、砂層、礫層が分布する。B−9孔では深度約16mに泥炭層を挟在する。B−7孔では深度約28.5m(標高11.5m)、B−9孔では深度18.5m(標高13.5m)以深に礫を含み、中位段丘離水前と堆積物と推定される。

米代川/浅内沼測線間のA1面で実施したジオスライサー試料

G−9は厚い腐植土層の下位に緑灰色の粘土層が分布し、その下位に古期砂丘堆積物とみられる褐色化した塊状無層理の細〜中粒砂が分布する。G−10、G−11孔には新期砂丘堆積物とみられる塊状無層理の細〜中粒砂が分布し、G−11孔では砂丘堆積物の下位に腐植土層と十和田aテフラが認められる。

八郎潟北岸/浅内沼測線間のA1面で実施したジオスライサー試料

G−1、G−2、G−3孔には、ともに生物撹乱の著しいシルト質堆積物が分布する。シルト質堆積物には十和田−八戸テフラに由来する漂流軽石が散在する。G−2、G−3孔ではシルト質堆積物の上位に細粒砂層が分布し、G−2孔に比較してG−3孔の砂層は厚い。表層の腐植土層は砂層の厚さとは逆に、G−1→G−2→G−3孔の順に薄くなる。

図2−2−9 浅内沼測線ボーリング簡易柱状図(1/500)

図2−2−10 浅内沼南北測線ボーリング・ジオスライサー簡易柱状図(1/100)