(3)御所野沼地区

空中写真の観察から,御所野沼地区には最低位段丘T5面が広く分布し,その上面は,国道13号付近で撓曲しているものと判断された。このため,御所野沼地区で,地形の詳細測量と4箇所のピット調査など行った。地形測量の結果によれば,国道13号の東側では国道に近づくほど傾斜が急になり,地形は上に凸形のカーブを描く,国道の西側には御所野沼が作られていて本来の地形は不明であるが,御所野沼より西側では傾斜が緩くなり,全体としては,国道付近を中心に幅の広い撓曲が存在するものとみられる。 

この面の対比を確実にするために,この地域のT5段丘面に対してピット調査(4箇所)を行った(図4−12参照)。国道のすぐ東側の2箇所のピット(TGO−2,TGO−3)と,御所野沼の西側のピット(TGO−4)は,いずれも同じ地質構成であって,対比されることが明らかとなった。また,地表の黒ボク土(耕作土)の直下にはルーズな礫層があって,その下位に不整合にT3段丘面の構成層とみられるくさり礫混じりの粘土層が分布している。

一方,最も東側のピット(TGO−1)では,耕作土の直下にくさり礫混じり粘土層があって,その下位に,TGO−2・TGO−3のピット底に見られたよく締まった砂礫層が分布している。これがT3段丘面の構成層であるとすると,T3段丘面の最上部にみられるローム質の粘土層が欠如している点,およびピットの位置する面が周辺のT3面より1m程度低いことから,T3段丘面が侵食されてできた面であると判断される。侵食の時代は,この面がT5段丘面に隣接してほぼスムーズに連続することと,T5段丘面の構成層が薄い砂礫層であることから,T5段丘面の形成時と判断した。したがって,ここではT5面が撓曲しているものと判断される。

ピットTGO−2とTGO−4のルーズな砂礫層の基底を基準面とし,TGO−4付近の地表面の勾配を原面の勾配とすると,この撓曲の変位量は2.2m,平均変位速度は約0.2m/千年(計算値は0.22m/千年)となる。

図4−12 御所野沼付近地質断面図