4−3−2 金沢断層付近の第三紀層の構造運動

金沢断層付近の地質断面の概念図を次頁の図4−3に示す。

金沢断層付近には基盤岩として中新統の相野々層が広く分布している。相野々層は断層の東側の山地および丘陵地に多くの露頭があってよく観察できる。一般に東に緩傾斜しているが,金沢断層付近のみは70゚〜90゚で東に急傾斜している。すなわち,中新世以降のある時期,現在の断層活動とは逆に西側が上昇するような構造運動があったことになる。

一方,臼田他(1976)が横手盆地内のボーリング結果をまとめて作成した千屋層基底面高度分布図を参照をすれば,急に深くなる千屋層の堆積盆の東縁は金沢断層の北端である六郷東根以北で,松田の川口断層(臼田他1976では千屋断層)ほぼ一致しているが,六郷東根以南では南西方向に延びて,金沢断層よりはかなり西側にずれてきている(図4−4参照)。これを川口断層の南延と考えれば,川口断層は,金沢断層西側の盆地内に散在する相野々層の残丘の分布域の西北縁に沿って盆地内の第四紀層下に伏在して延びていること

になる。

図4−3 金沢断層付近における地質構造概念図

図4−4 横手盆地における千屋層の分布と断層の位置関係

川口断層の活動時期は中新統末から鮮新統である。この時期金沢断層付近では西側が隆起するような構造運動があり,盆地を作るような西側が沈降する断層は金沢断層より西側にあって,金沢断層と川口断層の間の地域は隆起していたことになる。金沢断層が,東側隆起の断層として活動しはじめたのは,千屋丘陵の西側に千屋断層が生じたのと同時期(鮮新世の末期?)とみられる。