4−1−2 地形・地質概要

調査地域は,横手盆地の東縁に位置し,活動している断層の位置は,概ね東側の山地と西側の平野部との境界部(いわゆる地形境界線)に位置すると考えられる。

調査地域に広く分布する地質は新第三系中新統で,下位から真昼川層・小繁沢層・山内層・相野々層などの火砕岩,堆積岩(いずれも海成層),および貫入岩類からなる。中新統は断層より東側の山地に広く分布する。

中新統からなる山地の高度は,北部の千屋断層の背後(東側)の山地で,標高は1,000m前後,中部の金沢断層の背後(東側)で700m前後である。大森山断層の背後(東側)では,成瀬川以北の山地高度は400m前後と低く,成瀬川以南では高くなり,南端の大森山周辺では700mを越える。

断層より西側の盆地平野は,北部で標高50m前後,南部では標高150m程度である。ここでは,中新統は南部に点在する残丘状の丘陵地に分布するほか,第四系と鮮新統の下位に基盤岩として分布しているとみられる。

千屋断層の北部域の千屋丘陵には千屋層が分布し,最南端には三途川層と呼ばれる鮮新統が分布する。千屋層は,かつての断層活動によって沈降した地域に堆積したものが,地表部の断層位置が西方に変化したために上昇域となり,現在丘陵を形成しているものと考えられている。盆地平野の第四系の下位には,海成層の鮮新統が広く分布しているとされている(秋田県;1976)。

断層活動により沈降している盆地平野内には,礫を主体とする第四系が厚く堆積している。その他には,段丘堆積物・扇状地堆積物・現河床堆積物などの第四系が分布している。調査地域の地質層序を表4−2に示す。

※各地層の層相については巻末の資料集を参照されたい。

表4−2 地質層序表

千屋断層周辺域は,河成段丘が顕著に発達している。段丘の形成過程そのものが断層活動の結果であり,また段丘面上に断層変位地形が残されており,段丘地形の観察,解析が断層活動形態等を検討する手がかりとなる。

この地域の段丘を次のように(表4−1−2)区分した。

断層活動によって生じたとみられる変位地形は,山地あるいは丘陵地と盆地平野の境界に沿って各所に分布している。

横手市街より北側では,山地および丘陵地と盆地平野との地形境界は明瞭で,山地側には主要な河川沿いに河岸段丘が発達している。特に千屋断層沿いの千畑町から六郷町にかけては,明らかに断層活動との関連のある変位地形が多く認められる。また,山地と盆地平野の間に発達した段丘面を伴う丘陵(千畑町千屋丘陵,横手市北部杉沢丘陵)があり,そこでは現在活発に活動しているとみられる断層は丘陵と盆地平野の境界に位置するが,丘陵地の段丘面上にも断層変位地形がみられる。

横手市金沢・杉沢から市街地にかけては,明瞭な変位地形は古い中位段丘面上にあって,新しい段丘面上ではやや不明瞭となる。

横手市街地以南では,断層活動との関連が明らかな変位地形は認められない。また,北部のように断層の隆起側の主要河川沿いにみられる河岸段丘の発達も,南部ではみられない。

※なお,この地域の段丘面の区分と構成層の柱状図・年代測定結果・断層変位地形の詳細・分布する地質の層相,および第三系の地質構造(いずれも平成9年度の調査結果)については,巻末の参考資料に示す。