(2)分析結果

郷町部田地区で実施した深度100mのボーリングコアより、表3−15に示す火山灰試料を採取して、分析を実施した。

各層の砂粒組成、火山ガラスの形態及び重鉱物の計数結果を表3−16に、その百分率比を表3−17に示した。また、火山ガラスの屈折率の測定結果を図3−60図3−61に示した。

表3−15 火山灰分析試料一覧表

表3−16 火山灰の砂粒組成及び重鉱物組成(計数)

表3−17 火山灰の砂粒組成及び重鉱物組成(百分率)

図3−60 試料T1−2中に含まれる火山ガラスの屈折率

図3−61 試料T1−3中に含まれる火山ガラスの屈折率

@T1−1(GL−22.75m〜GL−23.00m)

本試料は、浅黄色を呈する粘土質シルトで、砂粒の含有率は0.5wt.%以下である。

砂粒組成は、石英、斜長石及び変質・風化粒子が大半を占め火山ガラスの含有率は約0.7%である。風化粒子は、外形から判断すると斜長石に由来するものが大部分であり、火山ガラスの風化物はないと思われる。火山ガラスの形態はCa及びCb型のものが1粒ずつ認められた。重鉱物は不透明鉱物、斜方輝石及び褐色を呈する普通角閃石が認められた。

上記のような試料中の砂粒の含有量の低さ及び砂粒中の火山ガラスの含有量の低さを考慮すると、本試料は純粋な火山灰ではないと判断される。本試料については、重鉱物の計数及び火山ガラスの屈折率の測定はできなかった。

AT1−2(GL−55.25m〜GL−55.55m)

本試料は、灰色を呈する中〜極細粒砂であり、やや固結している。砂粒中の火山ガラスの含有率は約61%で、重鉱物の含有率は約4%と低い。火山ガラスの含有率が高いことや外来の岩片が含まれていないこと等により、火山灰の純層であると判断できる。

火山ガラスの形態は、Taを除く全ての形態が含まれるが、筋の入ったTb、Cb及びHbが多いという特徴がある。火山ガラスの屈折率は1.4984〜1.4995の狭い範囲に集中し、平均値は1.4990を示す。

重鉱物組成は褐色を呈する普通角閃石が約52%とほぼ半分を占め、黒雲母が約16%とそれに次ぐ。普通角閃石は他形、板状で、淡緑褐色〜緑褐色又は緑褐色〜緑色の多色性を示し、風化しているものが多い。黒雲母は他形、薄板状で、赤褐色を呈し、緑泥石化しているものが多い。火山ガラス付きの鉱物はジルコン、不透明鉱物及び斜方輝石が認められる。ジルコンの大部分は自形〜半自形、柱状で、火山ガラスが付着する。不透明鉱物及び斜方輝石の大部分は半自形〜他形を示すが、自形を呈するものは火山ガラスが付着していることが多い。重鉱物の同定では計数されなかったが、無色透明を呈するざくろ石が極微量含まれている。

BT1−3(GL−56.23m〜GL−56.42m)

本試料は、灰白色を呈する中〜極細粒砂である。径3mm大の軽石を微量含み、平行ラミナが発達する特徴を示す。砂粒中の火山ガラス含有率は約94%と非常に高く、純層であると思われる。

火山ガラスの形態は、T1−2の試料と同様に、Hb、Cb、Tbを主体とするが、T1−2よりもHa及びHbの割合が若干高い傾向がある。火山ガラスの屈折率は1.4985〜1.4996の範囲にあり、平均値は1.4989を示し、T1−2とほぼ一致する。

重鉱物組成は斜方輝石が約36.3%、普通角閃石が約28.4%、黒雲母が約11.1%で、この他にガラス付きのジルコンや不透明鉱物を微量伴う。各鉱物の特徴は、T1−2と酷似する。

以上より、本試料はT1−2と同一起源の火山灰と考えられる。

CT1−4(GL−66.20m〜GL−66.42m)

本試料は、極細粒砂混じりの灰白色を呈する粘土質シルトである。弱い成層構造が発達し、炭化物や細粒な軽石を微量含む。火山ガラスの含有率は、約0.3%ときわめて低い。

砂粒組成は斜長石及び変質・風化粒子が大半を占める。変質・風化粒子は、外形や光学性から判断すると斜長石に由来するものが大部分で、火山ガラス起源のものはないと思われる。重鉱物組成は普通角閃石および不透明鉱物が大半を占め、斜方輝石、酸化角閃石、ジルコン、ざくろ石、緑廉石、アクチノ閃石等を伴う。また、計数データには含まれていないが、砕屑性の電気石も散見される。大部分は砕屑状の外形を示し、円磨度の高いものが多い。自形を呈する鉱物及びガラス付き鉱物は認められない。

本試料における砂粒中の火山ガラスの含有量の低さや砕屑性の重鉱物が多いこと等を考慮すると、本試料は純粋な火山灰ではないと判断される。また、本試料については火山ガラスの屈折率の測定はできなかった。