(3)火山灰分析

火山灰の分析にあたっては、以下の処理を行なった。

@前処理

まず試料を、50℃で15時間乾燥させた後、水洗い、超音波洗浄を行う。乾燥後、篩別を行い、120〜250mesh(1/8〜1/16o)粒径試料を、封入剤を用いて岩石用薄片を作成する。

A.粉砕・水洗い

試料の均一化をはかるために、約 2〜10kgの試料を前処理用試料として用いる。

試料は、いずれも軟質であるため、指圧により粉砕する。粉砕試料を20バケツ中で攪拌し、懸濁がなくなるまで水道水による粘土分の分散処理を繰り返し、粘土分を除去する。

B.フルイ分け

試料を60〜120 メッシュに試料調整するために、フルイ分けを行う。フルイ分けには常にテトロン製のメッシュクロスを用い、一度使用したら使い捨て、混合を防止する。

C.乾 燥

屈折率測定を行うため、試料の変質を起こさないため、乾燥はすべて室温における風乾とした。

D.碗かけ

試料中の鉱物を、その鉱物の比重を利用して粗く軽・重の比重成分に分離する。このうち軽比重成分には火山ガラスや軽鉱物が濃集され、一方重比重成分には斜方輝石、単斜輝石、普通角閃石などの重鉱物が濃集する。

E.超音波洗浄

鉱物に、粘土などの微粒子が付着しているため、それらを洗浄するために、超音波洗浄を行う。液の懸濁がなくなるまで行う。分散剤としては中性のヘキサメタリン酸ナトリウム(濃度1〜2%)を使用する。洗浄後、風乾する。

F.鉱物組成測定

試料中の軽鉱物中の火山ガラスの含有率、重鉱物中の斜方輝石、単斜輝石および普通角閃石の含有率を求めた。含有率は、VA(70%以上)、A(50〜70%)、C(10〜50%)、R(1〜10%)、VR(1%以下)およびN(含有しない)に分けて表示した。また、火山ガラスについては、その形状をバブル型(bw)および軽石型(pm)に分類し、両者の量比を求める。

G.磁 選

重鉱物の持つ磁性の強弱を利用して、永久磁石および電磁分離機を用いて、磁選を行う。

H.結晶表面処理

重鉱物の結晶面に超音波洗浄ではとれない火山ガラスや粘土が付着している場合があり、屈折率測定の障害になることがある。このため、20%フッ酸(HF)溶液に重鉱物を浸し、約10分間超音波洗浄を行い、鉱物の表面に付着している火山ガラスや粘土を除去する。

I.手 選

一般に上述の機械的処理では複数種類の鉱物が混在しているため、双眼実体鏡下で手選によって火山ガラス・重鉱物の単離を行う。

A重鉱物分析

主要重鉱物(カンラン石、斜方輝石、単斜輝石、角閃石、黒雲母、アパタイト、ジルコン、イディングサイト等)を顕微鏡下で識別し、ポイントカウンターを用いて無作為に200個体を計数して、その量比を百分率で示した。

B火山ガラスの屈折率測定

前処理により調製された120〜250mesh(1/8〜1/16o)の粒径試料を対象に、温度変化型屈折率測定装置を用い、火山ガラスの屈折率を測定した。測定に際しては、精度を高めるため、原則として1試料あたり30個の火山ガラス片を測定した。

選別された火山ガラスはそのまま、重鉱物はそれぞれ乳鉢でさらに粉砕・細片化し、温度変化型屈折率測定装置RIMS86(横山他、1986))を用いて、火山ガラスの屈折率および重鉱物(斜方輝石、単斜輝石および普通角閃石)の最大屈折率を測定する。また測定結果は、屈折率の頻度分布図を描くとともに、測定値の最大・最小値をはじめ最頻度(モード)、平均値および測定範囲(レンジ)を計算する。

1) 横山卓雄・ 原徹・山下透(1986):温度変化型屈折率測定装置による火山ガ

ラスの屈折率測定.第四紀研究,vol.25, p.21−30.

図6−2−2 屈折率測定の手順