1−3−3 地震記録

東海地方は、しばしば大型の被害地震が発生している。マグニチュード8級の大型地震としては、濃尾地震(1891)、東南海地震(1944)がある。明治以前では遠州灘沖合の地震 (1498)、天正地震(1586)、安政南海地震(1854)等がある。このほかマグニチュード7級の地震は、計15個位発生している。

東海地方の最近の地震は、濃尾地震の震源域の周辺部に順次広がって発生していると推定され、各々の余震域の空白域に発生している。1891年の濃尾地震及び1948年の福井地震、1945年の三河地震は同一構造線に沿ったものであると考えられる(飯田1972)。これらの地震に伴う断層系は、地殻変動連続観測より求めた永年的変動ないし地質断層系とも合致している。このような観点からみると、この構造線(福井断層、根尾谷断層、岐阜−一宮線、大高−大府断層、深溝断層など)に沿って発生した地震は、有史以来20数個に達する(図3−1参照、飯田1972)。

1983年〜1989年の深度20km以浅のマグニチュードM2.0以上の地震記録をみると福井付近の福井断層、知多北部の大高−大府断層、深溝断層沿いに地震が多く、根尾谷断層、岐阜−一宮線沿いには地震は少ない(図3−2参照)。

1983〜1994の知多半島周辺の詳細な地震記録(図3−3参照)では、三河地震の余震(地震発生の時系列変化は、金井 清の余震の減衰曲線にのる)と考えられる横須賀断層〜深溝断層に沿ってマグニチュード1〜3の地震が深さ30km以浅で発生している。常滑市、阿久比町、半田市周辺に深度深度10〜30kmにマグニチュード1〜3の地震が集中して発生している。このゾーンの地震は、琵琶湖東岸から伊勢湾に続く地震群(図3−2参照)の南端部に位置している。琵琶湖東岸〜伊勢湾の地震群の地域は、過去に大きな地震の記録のない地域である。平井撓曲や半田池撓曲付近には活断層(常滑層群が撓曲しているため活断層であるが、数10万年以降活動した証拠が無い)が確認されていないが、この知多半島中央部の地震の密集域は活断層に何らか関係したものと考えられる。

碧海郡や西尾市は濃尾地震や三河地震時に多くの噴砂現象がみられた(図3−4参照)。

一宮周辺の遺跡調査に伴い噴砂跡の発見(濃尾地震、東南海地震、三河地震等に伴うもの)がなされているが、今回の調査区域周辺では噴砂跡のある遺跡は発見されていない(*1服部 1993,1994,1995,1996)。このことは、(財)愛知県埋蔵文化財センターの、服部俊之氏にも、直接確認した。

*1

服部俊之(1993)濃尾平野における歴史時代の地震痕.平成4年度(財)愛知県埋蔵文化財センター年報.P126〜136.

服部俊之(1994)濃尾平野における歴史時代の地震痕−その2−.平成5年度(財)愛知県埋蔵文化財センター年報.P134〜142.

服部俊之(1995)濃尾平野における歴史時代の地震痕−その3−.平成6年度(財)愛知県埋蔵文化財センター年報.P136〜146.

服部俊之(1996)濃尾平野における歴史時代の地震痕−その4−.平成7年度(財)愛知県埋蔵文化財センター年報.P176〜181.

図3−1 濃尾地震断層系とその地震 飯田(1972)に加筆

図3−2 地震の震源と活断層の関係 名古屋大学地震火山観測センター資料

図3−3 中部地域の微小地震と活断層の関係

図3−4 調査地域の液状化履歴