3−2−2 調査方法

調査は、大型のバイブロサイスを震源とする「共通反射点重合法(CDP重合)」に基づく反射法地震探査である。調査の原理を図3−33に示す。まず、測線上に一定間隔(本調査では10m)に受振点を設け、一受振点あたり9個の受振器を各受振点を中心として測線方向に1.1m間隔で設置し、測線上の一点で発震して多数の受振点で反射波を同時観測する。この時同時受振する受振点数をチャンネル数と呼ぶ(本調査では240チャンネル)。次に、発震点と同時受振する受振点のペアーを一定距離(本調査では標準40m)だけ移動し、発震を行い記録を取得する。このような操作を測線に沿って移動しながら繰り返すことにより、地下の同一の点(共通反射点(CDP))について多重の反射波(共通反射点データ、図3−33下部)を得ることができる。これらデータに種々の処理を行い足しあわせる(重合)ことにより、測線上の各CDP位置直下の反射波が強調される。足しあわせるデータの数を重合数と呼ぶ(概念図では3重合、本調査では標準30重合)。これらの反射波の到達時間(走時)と振幅情報から、地下の速度構造と地質構造形態が地下断面図として得られる。

調査作業概念図を図3−35に示した。各受振点に配置された9個の受振器で得られた信号は加算により1つのアナログ信号にされてRSU(リモートステーションユニット)へ入力される。RSUは受振器で得られたデータを増幅してディジタルデータに変換し、4受振点分のデータを規定回数まで加算してメモリーに蓄積する。それらのデータは観測車に搭載された測定制御をおこなうCRU(セントラルレコーディングユニット)からのコマンドによりケーブルを通じて観測車内の収録装置まで伝送され磁気テープに収録される。同時にモニター記録で常に品質管理を行う。1発震点のデータ収録が終了すると、バイブレータは標準40m移動し、使用する受振器もCRUからの指令により移動させて、以後、前の発震点と同様にデータを収録する。なお、測定中に、使用しなくなった受振器、本線ケーブル、RSUは順次撤収し、これから使用する位置に設置していく。このような操作を測線に沿って移動しながら繰り返して行く。

市街地において、深度数kmまでの深部を対象とした反射法地震探査の震源としては大型のバイブロサイスが最適である。バイブロサイスの波形処理の概念図を図3−34)に示す。震源からは(A)に示すような周波数が徐々に変化する長時間の振動(スウィープ)を発生させる。地下の反斜面として(B)に示す5層を仮定すると、各反斜面からの反射波はそれぞれ(C)〜(G)の波形となる。地表の受振器での観測波形は、これら(C)〜(G)すべての重ね合わせとなり(H)に示すような波形となる。バイブロサイスの波形処理とは、(H)の波形に対して、震源からある瞬間にパルスが生成された時の波形に変換する処理である。この処理はスウィープ波形(A)を用いて行い、クロスコリレーションと呼ばれる。この結果を図中の最下部に示す。(B)で仮定した5層の反射波が明瞭に確認できる。この波形処理によれば、市街地での種々のランダムノイズをかなりの程度まで落とすことができる。