(7)鹿児島県に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

鹿児島県に被害を及ぼす地震は、主に陸域の浅い地震(甑海峡などの海域の浅い地震も含む)と日向灘や種子島、奄美大島の東方沖の海域での地震である。なお、鹿児島県とその周辺で発生した主な被害地震は、図9−38図9−41のとおりである。

 島部を除く鹿児島県は、その中央部を南北にはしる霧島−桜島−開聞岳の火山列によって東西に分けられる。この火山列の地域は顕著な沈降を伴った火山性の地溝帯を形成している。この火山列の東側には大隅半島、西側には出水山地や薩摩半島がある。県内には、シラスとよばれる姶良カルデラの約2.5万年前の火砕流堆積物が厚く堆積し谷をうめて広い台地をつくっている。鹿児島県の主な活断層としては出水山地の出水断層帯があり、鹿児島湾北部に鹿児島湾西縁断層と鹿児島湾東縁断層がある(図9−39)。

 島部を除く鹿児島県での地震は、薩摩半島など県西部に多い。ここにはこれまで知られている陸域の浅い地震のうち九州地方で最大といわれる1914年の桜島の地震(M7.1)が発生している(詳細は9−2(6)参照)。このほか、知覧付近に起きた1893年(M5.3)と1894年(M6.3)の地震、1913年の串木野南方地震(M5.7)、1915年の栗野付近の群発地震(最大M5.0)、1961年の霧島山北西麓の吉松付近での地震活動(最大M5.5)などの被害地震がある。さらに、1968年のえびの地震(M6.1)のように、周辺地域で発生した地震によって被害を受けることもある。えびの地震では、宮崎県えびの市(当時、えびの町)を中心に多くの住家が全半壊し、多数の山(崖)崩れが発生したが、県内でも死者3名、住家全壊35、住家半壊202などの被害{46}が生じた。

 最近では、1997年3月26日に鹿児島県北西部の地震(M6.3)が発生し、川内市、阿久根市および宮之城町で震度5強を記録し、負傷者31名、住家全壊4などの被害{47}が生じた。この地震の震源域の深さは8kmと浅く、東西方向の左横ずれの断層運動による地震である。4月3日に川内市で震度5強を記録した最大余震(M5.5)が発生し、負傷者5名、住家半壊6などの被害{48}が生じた。また、5月13日にはその南西5km、深さ8kmのところでM6.2の地震が発生し、川内市で震度6弱、宮之城町で震度5強を記録し、負傷者43名、住家全壊4、同半壊29などの被害{49}が生じた。

島部では、種子島や喜界島などに活断層がある(図9−42)。また、喜界島には階段状の平坦な土地(海岸段丘)があり、付近の南西諸島海溝で発生する地震に伴って繰り返し隆起したことを示している{50}。1996年の種子島中部の地震(M5.7)は浅い地震であり、震源域には下田−油久断層など北西−南東走向の活断層がみられるが、地表での断層のずれはなかった。奄美大島周辺の被害地震には、奄美大島に崖崩れ等を引き起こした1970年奄美大島北西沖の地震(M6.1)がある。1970年の地震はやや深い地震である。

 日向灘南部から種子島東方沖を経て奄美大島東方沖にいたる海域では、プレート境界付近に発生する地震がみられ、浅い場合には津波を伴うことがある。このうち、鹿児島県東部地域は、日向灘の地震で被害を受けることがある。例えば、1961年の日向灘の地震(M7.0)では、大隅半島、特に大崎町、志布志町で死者や家屋全壊などの被害が生じた。また、1662年の日向灘の地震(M7 1/2〜7 3/4)での県内の被害の詳細は不明であるが、津波被害などが生じた可能性がある。さらに、陸域の下へ深く沈み込んだフィリピン海プレート内の地震で被害を受けることがある。1909年の宮崎県西部の深い地震(M7.6、深さ約150km)では、鹿児島市で小被害が生じた。

 種子島東方の海域では、1923年の地震(M7.1)が発生し、種子島の中部と南部において家屋などへの被害が生じた。この地震はプレート境界付近の地震と考えられるが、津波の報告はなく、震源域は陸域にかなり近く、震源はやや深かった可能性がある。奄美大島東方の海域では、1901年の地震(M7.5)、1911年の地震(M8.0、詳細は、9−2(2)参照)、1995年の地震(M6.6、M6.5)などの被害地震が発生している。1911年および1995年の地震では、津波が喜界島や奄美大島を襲った。また、外国の地震によって津波被害を受けることがあり、1960年のチリ地震津波では、種子島および奄美大島で被害が生じた。

 悪石島・小宝島・諏訪之瀬島などの近海でしばしば発生する群発地震は、火山列上に発生するため、火山噴火との関連も考えられる。1972年の小宝島付近に発生した群発地震(最大M3.5)や1995年の小宝島近海の群発地震(最大M5.4)では小被害が生じた。

 なお、鹿児島県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図9−40図9−43に示す。

表9−7 鹿児島県に被害を及ぼした主な地震