(1)福岡県に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

福岡県に被害を及ぼす地震は、主に陸域の浅い地震である。なお、福岡県とその周辺で発生した主な被害地震は、図9−20のとおりである。

福岡県北部、特に福岡−北九州間の地域には、遠賀川沿いなどかつての炭田地帯を含む低地と低い山地が交互に分布する。このような低地と山地の境界付近に、西山断層帯などの活断層がほぼ南北方向に走っている。福岡市内には警固断層があり福岡平野の中心を通っている。警固断層は活断層であると推定されていたが、最近の調査により活断層であることが確実となった{32}。いずれもその活動度はC級である。福岡市以西には、背振山地があって南側の筑紫平野とは隔てられている。背振山地には、線状に伸びた谷など(リニアメント)がみとめられるが、確かな活断層はない。県中南部の筑紫平野およびその南側の耳納山地・筑肥山地には水縄断層帯以外に顕著な活断層はない。図9−21は福岡県の地形と主要な活断層を示したものである。

 福岡県北部で発生した被害地震としては、1898年の糸島の地震(M6.0)がよく知られている。この地震は福岡市の西方で生じたM6程度の群発性の浅い地震である。このときは、8月10日夜(2回)と12日朝、午後と、計4回の強い地震があった。最大の地震は8月10日のM6.0だが、被害は主に12日のM5.8で生じた。これらの地震による死者はなかったが、負傷者3名{33}、家屋の破損、道路や堤防の破損が多数発生した。被害の程度から震源域付近(糸島半島)では震度5相当で、一部地域では震度6相当の揺れであったと推定される。この地震に対応する活断層は見つかっていない。さらに、1929年には博多湾付近でM5.1、1930年には糸島郡の雷山付近でM5.0の地震が発生し、震源域付近で小被害が生じた。

 福岡県南部で発生した被害地震としては、679年の筑紫国の地震(M6.5〜7.5)や1848年の柳川付近の地震(M5.9)がある。679年の地震については、歴史の資料に家屋の被害のほか、長さ10kmほどの地割れが現れたと記されているが、これまで震央等の詳細は不明であった。最近の活断層調査では、久留米市付近から東へほぼ東西に走る水縄断層帯が活動したと推定されるとの結果も出ている{34}。1848年の地震では、柳川で家屋の倒壊などの被害が生じた。

 なお、1854年の伊予西部の地震(M7.3〜7.5)や1889年の熊本地震(M6.3)など、周辺の地域で発生した地震によっても被害を受けることがある。

 福岡県では、南海トラフ沿いの巨大地震のうちで、四国沖から紀伊半島沖が震源域となる地震で、地震動による被害を受けることがある。例えば、1707年の宝永地震(M8.4)では、筑後で潰れた家や死者があったと記録されている。また、1854年の安政南海地震(M8.4)や1946年の南海地震(M8.0)でも、家屋への被害が生じた。

 なお、福岡県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図9−22に示す。

表9−1 福岡県に被害を及ぼした主な地震