(2)島根県に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

島根県に被害を及ぼす地震は、主に陸域の浅い地震である。このほか、南海トラフ沿いの巨大地震による地震動や日本海東縁部の大地震に伴う津波で被害を受けることもある。なお、島根県とその周辺で発生した主な被害地震は、図8−20のとおりである。

 中国山地の北麓に位置する島根県では、地形は中国山地から階段状に日本海沿岸域へと低くなっている。宍道湖周辺には、ほぼ東西に走るいくつかの活断層が知られている。そのうちで宍道断層は確実度の高い活断層であるが、活動度はC級と推定されている。その他、県内の陸域には確実度の高い活断層は分布しないが、1872年の浜田地震(M7.1)の際には、浜田付近の海岸(波食棚)が広く隆起するなどの地殻変動が見られた{27}ことから、この沖合に活断層が分布するとも考えられている。図8−21は、島根県の地形と活断層を示したものである。

歴史の資料によれば、880年に出雲に陸域の浅い地震と見られる地震(M7)が発生している。これはより西の出雲大社周辺を震央とする考え方もあるが、現在の地震活動から見ると、出雲の国府のあった東出雲地方(現在の島根県東部)が震央とも考えられる。

 また、島根県西部の石見地方では、1778年のM6.5、1859年のM6〜6.5の地震が発生し、局地的に被害が生じた。最近では、1997年6月に山口・島根県境付近の地震(M6.1)が発生し、小被害が生じた。

 1872年に発生した浜田地震(M7.1)では、震源域が浜田付近の沿岸から日本海沖合にあったと推定される。これは陸域の浅い地震と同じタイプの地震と考えられる。本震の約1時間前に、かなりの大きさの前震があった。被害は資料によって異なるが、当時の浜田県管下震災表によると、旧浜田県では、死者536名や家屋全壊などの被害が生じた。また、この地震では著しい海岸の昇降が見られたほか、地震に伴って小津波があったが、これらによる被害はなかった。

 この他、島根県では、島根県東部の鳥取県境近くと三瓶山付近の広島県との県境付近などでM5〜6クラスの地震が発生している。両地域付近には、顕著な活断層がなく、活断層との関連は不明である。さらに、1943年の鳥取地震(M7.2)などのように周辺地域で発生した地震によっても被害を受けることがある。また、1940年のM6.6の地震のように、日本海南西部では逆断層型の浅い地震が発生することもあり、沿岸で津波被害が生じる可能性もある。

 島根県では、南海トラフ沿いの巨大地震のなかで、四国沖から紀伊半島沖が震源域となる地震で、地震動による被害を受けることがある。1946年の南海地震(M8.0)では、出雲平野などで死者9名や家屋全壊などの被害{28}が生じた。また、1854年の安政南海地震(M8.4)でも、出雲地方は地震動による被害が生じた。

 1964年の新潟地震(M7.5)、1983年の日本海中部地震(M7.7)あるいは1993年の北海道南西沖地震(M7.8)で発生した津波のように、日本海東縁部の大地震によっても、隠岐諸島や島根半島の沿岸域でかなり大きな津波被害を受けることがある。日本海中部地震による津波では、県内で負傷者5名のほか、床上浸水や船舶の沈没などの被害{29}が生じた。 

 島根県付近における小さな地震を含めた最近の地震活動を図8−22に示す。

表8−2 島根県に被害を及ぼした主な地震