2−7−3 万年山地溝南縁の断層

a.亀石山付近

万年山地溝の南縁は、万年山地域主部の南では、亀石山断層(北落ち、長さ9.5km)で区切られる。平成14年度の調査では、中園付近では、断層想定位置を挟んで、耶馬溪火砕流堆積物が、約150m北落ちに変位していると推定された。しかしながら、開析が著しいため、この付近では、新しい時代の断層活動の情報が得られる可能性は小さいと判断した。

b.宇土谷付近

亀石山断層の東方延長部にあたる宇土谷の流域には、Aso−4火砕流堆積物の堆積面が分布している。亀石山、宇土谷等の南縁の断層が、この面に変位を与えているかどうかの確認を試みたが、Aso−4火砕流堆積物の堆積面の分布範囲が予想より狭く、明瞭な結論は得られなかった。

b.菅原−麻生釣付近

万年山地溝南縁の断層の東端にあたる。菅原地区の南部には、涌蓋山溶岩から成る南方の山地の山麓扇状地面が広がっている。北部には大きく2段に分かれる”段丘面”様の平坦面がみられる(図7−9図7−10)。南方の山地の北縁が断層崖とされており(菅原3断層)、”段丘面”様の平坦面とそれを開析した沢沿いに広がる平坦面の間にも、断層崖が認められる(菅原1,2断層)。これらの断層を横断する測線で反射法弾性波探査を実施したが、明らかに断層運動によるとみられる地層の変形は確認できていない(図7−11)。

一方、麻生釣付近では、万年山溶岩が浸食された谷部にAso−4火砕流が分布し、緩斜面を成している。古い溶岩から成る山体に加えて、この堆積面上に断層崖が認められる(吉武山断層)。

次章でまとめるように、本地域には、主に北落ちの断層が分布し、前述した千町無田付近の断層と合わせて、「崩平山−万年山地溝南縁断層帯」としてグルーピングできる。平成15年度調査では、当初、この断層帯の本地域における代表的な断層として、吉武山断層(平成14年度調査で断層延長部に断層露頭を確認)と菅原2断層をトレンチ調査の候補とした。しかしながら、吉武山断層のトレンチ候補地点で、本トレンチ掘削前にハンドオーガーボーリングと露頭剥ぎにより地層分布を確認したところ、トレンチ調査で断層による明瞭な地層のずれを確認することは難しいと判断された(後述)。この結果をふまえ、本地域での詳細調査は、菅原2断層で実施することとした。