５−２−７　《草谷断層》

草谷断層は，近畿の活断層（岡田・東郷編，２０００）の写真判読の際，高位段丘面を切る断層変位地形が検出されたことを受け，平成１０年度の活断層調査で断層露頭をはじめて確認した活断層であり， 三木市別所町小林から加古川市平岡町にかけ， 山崎断層帯とはほぼ直交するＮ６０°Ｅ方向に約１３ｋｍにわたって延びる活断層である（図５−１８）。

断層活動に伴う変位地形（低断層崖や右横ずれを示す谷筋の屈曲）は，高位段丘U面からなる台地上の随所にみられ（図５−１８， 表５−９），断層線上には高位段丘面を構成する地層まで切る断層露頭を４ヵ所確認した。

草谷断層では，平成１１年度にトレンチ調査を実施しており， その結果， 草谷断層の最新活動時期が約１０００年〜１７００年前の間の可能性が高いことが判明した（図５−１９、図５−２０）。一方，最新活動に先立つ活動により形成されたと推定される断層も確認できたが，年代情報が得られなかったため，活動間隔を特定するまでには至らなかった。ただし，断層変位の及んでいる地層は，固結度や層相などから判断して，沖積層（約１万年前以降の地層）と推定されることから，活動間隔は数千年程度の可能性がある（表５−９）。

表５−９　草谷断層の諸元

図５−１９　草谷断層《稲美町草谷》トレンチ南西側壁面模式図（引用：兵庫県（２０００））

図５−２０　草谷断層《稲美町草谷》トレンチ北東側壁面模式図（引用：兵庫県（２０００））

図５−１９の南西側壁面では， 断層（Ｆ−１）はＣ層（１４Ｃ年代値１７００年〜２１８０年前）を切り，Ｂ層（１４Ｃ年代値９５０年〜１０００年前）に覆われている様子を確認した。一方，断層によ　り引きずられた格好で分布するＤ層 （１４Ｃ年代値１５３０年前〜２５２０年前）については， Ｆ−１断層の活動に伴って形成された可能性が高いと評価し， 最新活動時期を， １０００年〜１７００年前の間と推定した。

この壁面では，最新活動に先立つ１回前の活動は確認できなかったが，反対側の北東側壁面（図５−２０）では，Ｅ層下部を切りＥ層上部に覆われる断層（Ｆ−２断層）が，１回前の活動によって形成された可能性がある。ただし，Ｅ層（固結度などから沖積層と推定される）の年代値が直接が得られなかったため，活動間隔は詳しく求められず，数千年程度の可能性を指摘するにとどまる。