(1)事前調査

断層通過予想位置の精度を高めるとともに,トレンチ掘削地点の土質・地質状況を把握するため,トレンチ掘削に先立って比抵抗2次元探査(電気探査)およびボーリング調査を実施した。

@ 比抵抗2次元探査(電気探査)

トレンチ掘削の候補地とした谷部において,推定される地質構造(断層通過位置)について補強証拠を得るための比較的簡便な調査手法として,比抵抗2次元探査を実施した。

探査測線は,表層付近の堆積物の側方変化が顕著と予想されること,また探査深度を少し深く設定する為に,谷筋の方向(推定堆積方向)に2本の平行な測線(B1・B2)を設定した。

探査の諸元を 表4−2−5に示す。また,測定機器の仕様や測定・解析方法の概要については,別冊「資料編」に添付した。

探査の結果から得られた地下の比抵抗分布を図4−2−16に示す。

比抵抗分布の特徴として下記の事項が注目される。

・ 測線の起点側(下流側)の地表付近に高比抵抗部が目立ち,それとほぼ連続するような形で,G.L.−2〜3m付近を中心とする高比抵抗部がほぼ水平方向に連続して分布するが,B1測線の20m・30〜32m・48〜57m・80〜90m付近,B2測線の40〜57m・70m・93〜101m付近では,この水平方向への連続が途切れる箇所(不連続部)が認められる。

・ 上記の高比抵抗部の下位には,G.L.−10m付近を中心とした低比抵抗部がみられ,測線の終点側(上流側)の地表付近まで連続するが,B1測線の25〜35m間及びB2測線40〜55m間では分布深度のずれや水平方向の不連続が認められる。

これらの比抵抗分布の特徴から,B1測線25〜35m付近とB2測線40〜57m付近とを結ぶ範囲,およびB1測線48〜57m付近とB2測線70m付近とを結ぶ範囲に,比抵抗分布の異常を示す原因となった何らかの地質構造があるものと推定し,B1測線上3ヶ所におけるボーリング調査を計画した。

A ボーリング調査

比抵抗2次元探査の結果から,比抵抗分布に何らかの異常がみられる箇所を中心として,表層の土層分布状況と基盤深度の把握,さらに比抵抗値と地質との関連を確認することも狙って,計3地点のボーリング調査を実施した。

各孔の詳細な記載は,1/20柱状図として別冊「資料編」に添付した。

調査地近傍における地質分布状況の概略は以下の通りである。

・ 地表付近には,耕作土または旧耕作土と考えられる,厚さ1〜1.5m程度の粘性土層が分布する。

・ その下位では,G.L.−1〜1.5m付近に砂礫層が分布,G.L.−2m付近に厚さ50cm以下の粘性土優勢層を挟在し,再び砂礫層が出現する。ただし,両砂礫層は色調や固結度等の層相が異なっており,別の時代の堆積層と推定される。

・ 以深も砂礫優勢層が続くが,G.L.−3〜3.5m付近(G.H.+140〜141mに相当)よりも下位の区間では色調や固結度が上位とは異なる。なお,この層相の境界は北側・南側で浅く中央部でやや深くなるような傾向を示している。

・ 基盤岩はG.L.−9.5〜11m付近(G.H.+133〜135mに相当)より下位に出現,南側で浅く北側で深くなるような傾向を示している。

また,確認した地層の年代情報を得るために,ボーリングコアを用いて,微化石総合調査および14C年代測定を行なった。

その結果を図4−2−17地質断面図にまとめた。

Bまとめ

ボーリング調査で得られた地質情報と先の比抵抗分布の特徴とを比較すると,以下の点が見いだされる。

・ G.L.−2〜3m付近を中心とする高比抵抗部は,粘性土層の下位に分布する砂礫層の上部に概ね一致する。したがって,この高比抵抗部の形状の変化が何らかの断層変位を表わしている可能性が考えられる。

・ G.L.−10m付近を中心とする低比抵抗部は,砂礫層下部〜基盤岩上部に相当するが,低比抵抗部の分布形状と基盤岩上面の形状は必ずしも一致しないようである。したがって,この低比抵抗部の形状の変化は必ずしも断層による変位と対応していない可能性が考えられる。

これらの結果から,G.L.−2〜3m付近を中心する高比抵抗部の分布形状に異常が認められる箇所が,何らかの断層による変位が生じている箇所に対応するものと考えられる。ただし異常が確認された区間のうち,B1測線20m付近・48m付近にはそれぞれ石積と水路があったこと,またB1測線53m付近より南側は全体に地表が湿っていたこと等の状況を考慮すると,これらの区間では断層変位以外の条件によって比抵抗分布に異常がみられた可能性も考えられる。したがって,何らかの断層変位と対応する可能性が最も高い区間としてはB1測線30〜32m付近が抽出された。

ただし,他の区間でみられる比抵抗分布の異常が断層変位に対応するという可能性を完全に否定できる訳ではないこと,また基盤岩に表われた断層変位については判っていないこと,さらに,用地的な制約からトレンチ掘削位置をあまり絞り込みすぎると重機の取り回しがきかないこと,等の理由から,トレンチ掘削はB1測線30〜32m付近を含んだ,ほぼ当初計画どおりの位置において掘削することとした。

また調査地に分布する堆積層について以下の情報が得られた。

・ 地表直下には1〜1.5m程度の厚さで,耕作土および旧耕作土とみられる粘性土層が分布する。最下部の堆積年代は約3,000年前と推定される。

・ その下位(G.L.−1〜1.5m付近)には砂礫層が分布するが,これも約3,000年前程度の年代値を示しており,大きな時代的間隙はないものと思われる。

・ さらに下位(G.L.−2〜2.5m付近)には,K−Ah(鬼界−アカホヤ火山灰)の可能性も考えられる,有色ガラスの混在が認められる粘性土層が挟在しており,その降下時期(約6300年前)とほぼ同時期か,あるいはそれ以降の堆積層である可能性も考えられる。

・ したがって,地表からG.L.−2〜2.5m付近までの区間(およそ6,000年前以降の期間)はさほど大きな時間的間隙なく堆積が進行したものと考えられ,過去のイベントの痕跡は残されていると思われる。

・ さらに下位には砂礫優勢層が連続するが,堆積年代は約4万年前という結果が得られており,約4万年前以降6,000年前頃までの間の堆積層が欠如している可能性がある。