6−7 トレンチ・ピット調査のまとめ

トレンチおよびピット調査では以下の事項を結論とした。

1)万正寺におけるピット調査では、断層の活動時期などを検討するには至らなかったが、断層の位置はおおよそ20mの幅にに限定され、ボーリング調査の結果と合わせて断層活動を検討する資料は収集された。現時点の資料からもこの地点における断層は、44,000年前以降の活動は確実であり、7,700年前以降にも活動した可能性は高い。

2)睦合における大型ピットの最下部では、礫層の頂部に明らかな断差が認められ北側法面では小断層によって礫層が切られる可能性が考えられる。この礫層には縄文期の土器片 が含まれることから、ピットに露出した地層は予想よりかなり新しく、この地点で期待される断層活動の間隔や時期の特定を行うためには掘削深度が十分ではない。

3)睦合における中型ピットでは、撓曲によると考えられる地層の傾斜と小規模な噴砂現象が確認された。これらの事象は直接断層活動の履歴を明らかににするものではないが、この地点でも断層活動の影響が現れていることを示すものである。

4)森山地区ではトレンチ調査の他に、小型ピットによる地層の堆積状況の確認を行った。このピットには地層の変形は見られないが、近接するボーリング孔(No.2孔)においては30cmの深度で基盤岩が露出するのに対し、ピット地点では深度1.50mまで砂・シルト・泥炭が確認され断層の背後に湿地帯が形成された可能性がある。このピット最下部 からは須恵器の破片が確認されている。

5)今回実施したトレンチ調査のうち森山トレンチでは、断層の最終活動時期・活動間隔・1回の単位変位量などを明らかにすることを目的とした。トレンチでは2回の異なった 活動が確認された。しかし、各地層の年代値から断層に切られる最も新しい地層年代と断層に切られない最も古い地層年代に大きな時間差があり、断層の最終活動時期を特定 するには至らなかった。

 また、活動間隔や単位変位量についても検討資料は得られたものの、これらを限定するには至らず、最終活動については「少なくとも1,800年前以前である」ことが確定され、活動間隔はこの間に活動がないことから1,800年以上であることが確認されたにすぎない。単位変位量については、確認された断層面沿いのずれ量が3.3mであり1回の変位量はこれ以下であることを限定するにとどまった

6)大笹生トレンチでは、近接する断層面確認露頭との関連によって、断層の最終活動時期を限定することを目的とした。この結果トレンチ実施位置では約10,000年前に形成された段丘面を約5.5m垂直変位させている断層が、9,000年前から4,000年前の間に最終活動を起こしたことがほぼ確実となった。

この断層における活動間隔や単位変位量あるいは並列する断層の活動時期などは今回の調査結果からは限定するに至っていない。